「日本自転車界の長老は」 power×今西尚志氏
ご機嫌いかがですか?本日は現役日本自転車競技の中では重鎮とも言える、シマノの今西選手との対談模様をお送りします。
インタビューの下に掲載した戦歴を見て下さい。泣く子も黙る戦歴です。トップ選手の頭の中に据えられた自転車競技とは何か、を探るインタビュー。

- power
- 「こんにちは、今日はよろしくお願い致します。」
- 今西
- 「よろしく!」
- power
- 「なんでも小耳に挟んだところによると、先日のピストの試合で落車、靭帯を切って手術されたそうですが、具合の方はどうですか?」
- 今西
- 「結局1ヶ月近く休む羽目になってしまい、ようやく最近になって外で自転車に乗れるようになったところです。」
- power
- 「シーズン中に1ヶ月休むとコンディションの立てなおしが結構大変ですね。」
- 今西
- 「きついよ。少し乗りに行ったんやけど、あっという間に脈が190を超えてしまいました。まだ肩には固定用のピンが刺さっていて、満足に動かない状態なんですよね。」
- power
- 「肩にピンが!刺さっている!うう、私は注射が怖いのですが、注射よりも恐ろしそうです。早く治るといいですね!」
- 今西
- 「ハンドルが持てるようになってるから、大丈夫やで。」
- power
- 「ほんまでしょうか?いやいや、つい懐疑的になってしまいました。注射絶対反対!」
- 今西
- 「ピンやからね。」
- power
- 「・・・わかりました。さて、自転車の事についてお聞きしてみたいと思います。今西さんは長い間自転車に乗っておられて、今も第一線で活躍しておられるわけですが、ずばり、自転車競技は面白いですか?そして、好きですか?」
- 今西
- 「確かに、ここまでやってきたのですから、自分自身、面白いと感じているのでしょう。でも普通の人が感じているような感情ではないかも。でも久しぶりに(怪我で乗れなかった)乗った最近の感情としては、「練習ができて嬉しかった」、という感覚かな。」
- power
- 「常に、ああ、面白い!と思いつづけている訳では無いのでしょうか。」
- 今西
- 「そうですねえ。やっぱり仕事なんで・・・。」
- power
- 「仕事となると生活の中での位置が変わってしまうんでしょうか。高校の同級生であるアヤちゃんのお母さんが「仕事と趣味は両立しないわよ」と力説しておられたのを思い出しました。余談でした。では、挙げるとすれば、自転車競技や自転車の面白さは何だと思いますか?」
- 今西
- 「主にロードレースについてですが、選手同士の駆け引きはもちろん、地形、風と言った自然変化そのものとの戦いって感じがするからでしょうね。だからバンクでロードレースをするなら、おもしろくないでしょう。」
- power
- 「なるほど。」
- 今西
- 「あと、展開によっては、誰でも勝つチャンスがあることかな。」
- power
- 「その点は、陸上競技との大きな差だと思います。で、今西さんはそのチャンスを何度ももぎ取ってこられたと思うわけですが、今までで最も印象に残っているレースとかは、ありますか?」

- 今西
- 「95年のツールド北海道第1ステージで優勝した時です。」
- power
- 「実はそのレース、私自身も走っており、強く印象に残っています。今西さんが先頭でゴールされた数分後に私もゴールしました。自転車を始めて1年も経っていなかったにもかかわらず参加させて頂いたレースで、実業団のスピードに圧倒されました。溶けてバターになるかと思いました。でも展開が良くて学生の中ではかなり上位だった、それで良く覚えているんです。試合後、宿でダイジェストを見て「自分より前ではこんなすごい展開になっていたのか!」と驚愕しました。それで、今西さんがこのレースを一番に取り上げられるのは、どう言った理由からでしょうか?」
- 今西
- 「シマノに入って2年目、94年のシーズンで一時クビになったんです。それで、95年は練習時間がもらえず、フルタイムで働いてたときがあったんです。そしてそのシーズン後半、それまでろくな成績も残せず、絶体絶命か?という時に、まさかの初出場で優勝したんです。結果的にそのおかげで、1軍に復帰させてもらって今に至るわけなんです。だから大袈裟にいえば私の運命を変えた、重要なレースだったんです。未だにあれほど興奮したレースはないです。」
- power
- 「レース中には何を考えますか、不安ではないですか?」
- 今西
- 「レースによって違いますが、「いかに力を温存させようか」、とか「アタックをいつしようか」などを考えます。不安は、レースが始まれば無いですね、というより不安を抱く暇がない。それよりレース前が不安です。不眠症によくなります。」
- power
- 「不眠症になるくらい不安というのは、かなりプレッシャーがあるわけなんですね。なるほど。では、練習についてはどうですか。辛くないですか?」
- 今西
- 「確かに辛いです。ですが、練習をしないで、弱くなる事がもっと辛い。」
- power
- 「自転車を辞めてやる!と思った事は?」
- 今西
- 「シマノに入って2年目に、一時チームをクビになったときかな。」
- power
- 「今西さんとしてもストレートにここまで来られたのでは無いんですね。では、これから自転車競技を始める人にアドバイスすることがあるとすれば、如何でしょうか。」
- 今西
- 「自転車競技、特にロードは努力すれば、必ず結果に現れますので、がんばって下さい。」
- power
- 「私もがんばりたいと思います。」
- 今西
- 「がんばってください。」
- power
- 「さて、さらに幾つか質問させてください。自転車競技を語る上でヨーロッパを外す事は出来ないわけですが、何が違うと思われますか?」
- 今西
- 「メジャー、マイナー。それだけです。あと人種の骨格の違いもあると思います。」
- power
- 「それで、今年はジロデイタリアに野寺選手が出場したわけですが、同じシマノの先輩、チームメイトとして、どの様にお感じになっておられますか?」
- 今西
- 「彼はすごく才能がある選手なので、本場イタリアに比較的若い年齢で行けた事は、良かったと思います。彼は性格もよくナイスガイで、また個人的にも仲が良いので、ぜひがんばって、もっと活躍してほしいものです。」
- power
- 「本当にそうですね、活躍を期待したいです。では、少し違う話題になりますが、機材というのはどれほど重要ですか?ディテールに拘る人も多いですが。」
- 今西
- 「やはり、確実に実力を発揮しようと思うと、機材はとても重要です。僕の場合は確実に機能してくれる機材を選びますね。いちかばちかで、軽量の壊れやすいものは使いたくないですね。」
- power
- 「特にロードは乗っている時間も長いので、一層そう言えるかもしれないです。では、「そろそろ引退や」と考える事もあると思いますが、いつの日かレースを辞めたとしても普段自転車に乗ると思いますか?」
- 今西
- 「時々は、乗るでしょうね。でも他のスポーツもしたいですね。」
- power
- 「辞める、なんて言う話をしていたら気分が落ち込んで来ました。では、さわやかな話題に移行しましょう。好きな果物は何ですか?私は、桃なんですが。」
- 今西
- 「なかなか唐突ですね。しかし、強いて言うならバナナでしょう。柑橘系はベタベタして、あまり食べたくないです。缶詰なら好きですが。」
- power
- 「バナナですかー。バナナもおいしいですが、私は桃です。失礼しました。では、最後の最後になりましたが、核心の質問をさせて頂きたいと思います。今西さんとブルース・LEEの関係はいかなるものでしょうか?」
- 今西
- 「(間髪を入れずに)昔から空手が好きでした。高校の時も、町の道場に通って、そのついでに自転車をやってました。当時はジャッキーチェンが流行ってましたが、「なにかこれは違う」。そんな時、ブルース リーの映画を見たんです。そしてあのゴム毬が跳ねるような動きに感動しまして、それからファンに。いろいろな本を読んだのですが、彼は単なるアクションアクターではなく、普段の生活から武道魂を持った武道家だったんです。そういうところがますます男心をくすぐられまして。そうこうしているうちに、周りが「顔が似てる」と言い出したので、冗談で自分のキャラクターにしてしまいました。」
- power
- 「いやいや、冗談などではない、ということは今西さんのその輝く目が証明しているのでは?」
- 今西
- 「彼の精神は今も生きています!」
- power
- 「本日は、どうもありがとうございました。」
- 今西
- 「こちらこそ、どうも。」
自転車が好きかどうかわからないと答える今西氏のコメントは、自転車競技のタフさを物語っています。しかし、これは幾つもの壁を乗り越えてきた選手のみに許された発言なのかもしれない。先日開催されたツールド北海道2001では、怪我をされていたとは到底思えない成績を記録しておられるようです。うむ。9月末日。
power(2001/09/30)
経歴
1969.5.10生まれ
京都府出身
85年府立桂高校→88年駿台予備校→89年同志社大学商学部→93年(株)シマノ入社
自転車は高校のときに始め、大学では、サイクリング同好会レース班(現体育会弱小自転車競技部)所属。
そして、93年に住田氏のごり押しでシマノレーシングに。しかし2年目には、チームをクビになり、フルタイムワーカー(2軍)として1年間レースに出る。
96年に、1軍に復帰し、現在に至る。今(2001年9月末現在)は、チームの長老で主将。
戦歴
- 91年
- インカレロード3位
- 92年
- 都道府県対抗4000M団体追抜き 1位
- 93年
- 大阪国際ロード3位
- ツールド東北ステージ1位
- 94年
- 近畿ロード 1位
- 95年
- ツールド北海道ステージ1位
- 国体ロード4位
- 96年
- ツールド東北個人総合1位
- 全日本実業団ロード 2位
- 西日本実業団ロード1位
- 97年
- 全日本選手権ロード3位
- ツアーオブジャパン個人総合18位(日本人1位)
- 98年
- ツアーオブ SOUTH CHINASEA 個人総合2位
- 国体ロード2位
- 00年
- ツアーオブジャパン茂木4位
- 01年
- ツールド韓国個人総合6位
関連事項
- ツール・ド・北海道
- http://www.tour-de-hokkaido.or.jp/
- SHIMANO
- http://cycle.shimano.co.jp/
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