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「インカレチャンプの胸の内」 power×小嶋洋介氏

皆さんお元気ですか。
今回は2001年度インカレ(大学対抗)ロードの優勝者、小嶋洋介氏との対談をお送りいたします。
このインタビューを通して学生チャンピオンの心の内に秘められたものは何か、僅かながらでも発掘出来たかと思いますが、出来ていない場合には苦情をお寄せください。
ちなみに小嶋氏は京都大学自転車競技部所属であり、私の後輩でもあります。



power
「こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いします。では始めに、簡単な経歴と、自己紹介をお願いできますか。」
小嶋
「昭和53年4月12日東京で誕生→キリスト教系幼稚園→東京都調布市立第一小学校→東京都世田谷区立松原小学校→同、梅丘中学校→千葉県私立市川高校(東京の学校に入り損ねた)→河合塾(大学に入り損ねた)→京都大学自転車競技部→来年は留年で5回生といったところです。」
power
「ふむ。東京で生まれ育ったようですね。京都へは大学から。ちなみに京都大学を選んだのはどういう理由からですか?」
小嶋
「あみだくじで決めました。」
power
「なるほど。それでは、自転車の主要な戦績もお願いできますか」
小嶋
「今年(2001年)の成績は、西日本チャレンジU-23優勝、美山ロード優勝、全日本学生選手権チームロード4位、全日本学生選手権個人ロード6位、ツールド信州優勝、インカレロード優勝、インカレ個人追い抜き6位、国体ロード3位などです。」
power
「うむー、素晴らしい成績ですね。なんと4回も優勝しているんですね。はて!いい事を思いつきました。今年は「小嶋4回優勝の年!」とするのはどうでしょうか。一句詠ませて下さい。
『 4回優勝したからいいねと 君が言ったから
今年は小嶋4回優勝の年 』
どうでしょうか?」
小嶋
「俵万智の真似にもなっていませんね。」
power
「え? さて、小嶋君が自転車に乗り始めたのはいつでしょうか」
小嶋
「幼稚園に入るころにはママチャリに乗っていた気がします。ロードレーサーは高校に入ってからです。でも3年間で3000kmも乗っていないです。」
power
「と言うことは、うるう年も考えて、高校では平均一日2.74223034734917733089579524680073km以下だったと言うことです。なんにせよ、高校からロードには親しんでいたわけですね。大学で自転車競技部に入ったいきさつはどのようなものでしたか?」
小嶋
「大学では体育会の部に入ろうと決めていて、いろいろ見た中で一番部の雰囲気がよかったので入りました。」
power
「それは良かったですね。私が訊くのもなんですが、京大の自転車競技部とはどのようなところでしょうか。」
小嶋
「一言で云うなら、変人が多く集まる場所です。特に自転車が強かった人でまともに就職した人はほとんどいないと聞いています。」
power
「まあ、まともな就職=良い就職とは違うと思うんですよ。そんな私もまともに就職していません。良い就職とも別に言えませんが。さて、大学と言えば研究機関。勉学との両立は出来ていますか?」
小嶋
「僕は全くできていません。それゆえ留年が決まっています。両立という概念自体あまり好きではないです。まあただの負け惜しみですが…。」
power
「これほどの成績が残っている限り、負け惜しみでは無いと思います。さて、大学での自転車は、基本的に他大学との戦いでもあるわけです。他の大学との交流はどのような様子ですか?」
小嶋
「春は関西圏の大学と合同合宿をやっています。また学連4年目ということで試合に行くといろいろな大学の人と交流はあります。久しぶりに知り合いに会えるというのも試合の楽しみのひとつです。」
power
「いいですね。交流があるとレース前後、レース中も楽しくなりますよね。因みに私達の代も仲が良く、京大に限らず、同志社や立命、京産などの人と交流が今もあります。今朝も電話がありました。」
小嶋
「いいですよね。」
power
「さて、小嶋君の成績を振り返って見ますと、今年はエクセレントですが、1、2回生の頃はまだそれ程強くなかったようですね。どうして4回生に結果が出て来たのでしょう?」
小嶋
「1,2回生のころは純粋に実力が足りず、3回生のころは結果をあせり、実力に見合った走りができていなかったため結果が残せなかったのだと思います。今年結果が出せた理由には、地道な練習の積み重ねにより実力がついたこと、そして力の使い方がうまくなったことがあると思います。」
power
「なるほど。積み重ね、ということですが、練習は沢山していますか?」
小嶋
「結構沢山練習しました。今年は留年が決まっているだけに結果を残すことが求められていました。それゆえ練習もなるべく妥協を入れないようにしていました。今年の自分の実力を考えると妥当な練習量だったと思います。」
残り3周、先頭を追う小嶋
power
「インカレに優勝するくらい練習したということですね。まさにロードは練習のスポーツ。敬服いたします。さて何度も質問されているとは思うのですが、気にせずに聞かせていただきます。インカレで優勝されましたが、その時の勝ち方はどのようなものでしたか?」
小嶋
「少人数での逃げ→一人で飛び出してゴール。というのが僕の勝ちパターンなのですが、このときは自分で決めようとした逃げが決まりませんでした。しかもタイミングが悪くほかの逃げが決まってしまいました。この逃げに日大の人と追いつき、さらに逃げていた日大の人と三人で新たな逃げ集団を形成。最後の数キロを一人で飛び出して独走、勝ちました。」
power
「京大のチームメイトの献身的なアシストも手伝い、超格好良い勝ち方だったと伝え聞いております。最後、日大二人と三人で逃げているとき、沿道から京大がんばれ!と皆さんが応援してくれたそうですね。そのときの気分はどうでしたか。」
小嶋
「逃げを決めるときにはかなりのプレッシャーがかかり、強い意志が必要です。しかし実際は「やはりつかまるのでは…」とか「もうしんどい」とか弱気になってしまうことがよくあります。こんな時に応援されるとやはりうれしいものです。インカレの時には皆さんの応援で一種の興奮状態になり、苦しさも忘れ「絶対に勝つ!」と思いました。」
小嶋インカレ優勝の瞬間
power
「優勝した時の感覚は?」
小嶋
「大声援の中、勝利を確信し、ゴールに向かっている最中は鳥肌が立ちました。やはり最後のチャンスをものにできたという達成感は最高でした。」
power
「そのインカレの試合、どの時点から優勝を狙ったのでしょうか?」
小嶋
「学連最後のレースですし最初から優勝は狙っていました。中盤に決まった逃げに乗れなかった時は本当にあせりました。」
power
「強い優勝への固執があったので挽回できたわけでもあるわけですね。さて、個人的に気になる質問をさせてください。学生全国一、ということで皆から祝福されたと思います。それをお父さん、お母さんには報告をしましたか?どのような反応でしたか?」
小嶋
「一応しました。特に際立った反応はなかったです。電話だったのであまり詳しくは話していませんが、留年が決まっているだけに親も複雑な心境だったと思います。」
power
「そうですか。国体でもロード三位という成績を残されました。振り返ってみてどうですか。」
小嶋
「今回はとにかく結果を残すことだけを求めて走りました。喜びや達成感よりは何とか結果を出せたという安堵感が大きかったです。あと、いつものレースとは違い民泊だったのですが、なかなか楽しく貴重な経験ができました。」
power
「京都車連の中村さんも喜んでおられた事でしょう。『ご苦労さんー』って。内輪ネタでした。さて、小嶋君、今後はどうする予定ですか?」
小嶋
「僕は自分のエネルギーをすべてつぎ込めるような将来の目標が見つからないため、とりあえず決断をだらだらと先に延ばすべく大学にきました。いまだ方向性は見えないままなので今後の人生の予定を考える予定です。」
power
「良い判断、決断が下せると良いですね。自転車に限って話をすると、競技の自転車を辞める時はいつですか。」
小嶋
「心から勝利を求められなくなった時、または限界を感じた時です。」
power
「勝利を強く意識しているようですが、自転車に乗ることは面白いでしょうか。」
小嶋
「元気な時やたまに乗った時は面白いけれど、シーズン後半など疲労が蓄積してくると自転車に乗ること自体つらいですというか大嫌いになります。レースで勝つことが目標なので仕方がないのですが。」
power
「勝負を中心に据えると、面白みを置いてゆかなければならない時もあるのは確かでしょうね。では単に楽しく乗るという視点から捉えた場合、自転車は雄大な自然の中を移動すること、それ自体が最高の面白さだと思うのですが、特に京都の周りは自然に恵まれています。そのようなことについて意識することはありますか?」
小嶋
「確かにそれはありますね。迷いがあるときや何もやる気のしない時などは景色を楽しむためだけに走りに行ったりします。」
power
「機材を整備することは好きですか?自転車の面白さをディテールに見出す人もおられますが、どうでしょうか。」
小嶋
「基本的に整備は大嫌いです。機材は機能が維持できれば良いと言う考え方です。」
power
「素晴らしい考え方です。激しく共感を覚えます。」
小嶋
「しかし変速しないとかチェーンが落ちるなどということが無いように最低限の整備はしています。自転車の面白さをディテールに見出すことも楽しみ方のひとつだと思います。僕自身は自分の自転車には特にこだわりはないのですが、それでもいつもと違う練習用タイヤを初めてつけて走る時などわくわくしてしまいます。」
power
「それはわかります。バーテープを変えただけでウキウキしますよね。」
小嶋
「いや、それは断じてありません。」
power
「あははー!んで、長時間自転車に乗りつづけるにはプライドと言いますか、自分を励ますものが必要だと思います。レースで勝つことを目標として掲げたその上で、何が自転車に乗る、乗り続ける原動力となっていますか?」
小嶋
「似たような意味合いですが、やはり結果を求める心だと思います。目標を達成するためのプロセスの中に長時間の練習がある以上、ある程度つらいことは仕方がないと思います。といいつつも多かれ少なかれ練習に妥協が入ってしまうのですが。」
power
「結果を求める心。うむ。格好良すぎます。結果を求める心。はて!また思いつきました。一句詠ませてください。
『 結果を 求める こころ 』
どうでしょうか?」
小嶋
「575にもなっていないですね。」
power
「小嶋は詩の心は、無、い、と。メモしました。さて、自転車はクールだと思いますか。またロードに乗っている自分はクールだと自覚、意識していますか。」
小嶋
「僕に関してははっきり言ってクールではないと思います。これは知り合いの誰もが認めるところです。何か変らしいです。ちなみに僕が見た選手の中で最もクールだったのはハロン11秒台の記録を持つ筑波大学の女子スプリンターで、彼女のしなやかなダンシングのうしろ姿には心底ほれ込みました。超絶クールで美しいです。来年は後輩の応援と偽ってこのおしりを見に行く予定です。」
power
「私は先日見かけた女性サイクリストの太い足に心底ほれ込みました。通じるものがありますね。ひょっとしてご本人か?うおー!さて、続けて質問です。成績が出る前の小嶋と、出した後の小嶋の違いはありますか?」
小嶋
「成績が出る前は練習に迷いとあせりがあったのですが成績が出るようになってからは吹っ切れました。また勝つために必要な感覚が身に付いたような気がします。しかし根本は変わっていないです。」
power
「勝つために必要な感覚、とはどんなものですか?」
小嶋
「まずは自分の実力を把握していることが重要です。その上でその実力でもアタックが決まりそうなタイミングを見付ける感覚が勝つのに必要だと思います。」
power
「実力を把握したり、勝負のポイントを見極めたり出来るようになるのに、大学から始めた人間が数年で到達するのはかなり難しいですよね。レースに日本のロードレース環境に望むことはありますか?」
小嶋
「ありきたりですが競技人口が増え多くのレースが開催されるようになったらいいと思います。」
power
「ふむ。ありきたりの回答ですね。しかしそうなれば素晴らしいです。自転車以外に趣味や好きな事はありますか?」
小嶋
「ボーっと考え事をすること、勝負すること、人間観察、上手くはありませんがピアノを弾くこと、だらだらすること、美味しいものを食べることなどです。」
power
「ピアノは一度聞かせていただいたことがあります。ホロヴィッツも半泣きなくらい上手で感動しました。」
小嶋
「言い過ぎですよ」
power
「勿論言い過ぎです。美味しいものも好き、ということで、よく食べに行くお店はどこでしょうか。」
小嶋
「うちのそばにあるチャーリーブラウンというとんかつ屋さんがお勧めです。座席の数が少なくていつも混んでいますが、さくさくのとんかつは最高です。詳しい場所は秘密です。」
power
「名前は聞いたことがあるのですが、行った事ないです。私は御蔭通のひらがな館によく行きました。京都をご存知ではない方には分らなくて恐縮ですが、女性はごはんおかわり無料です。豆知識でした。で、好きな果物は何ですかね。」
小嶋
「大概の果物は大好きです。今年、山梨の試合で食べた1パック200円の激安の桃は最高でした。」
power
「1パック200円とは安すぎ!桃の価格破壊がついに・・・。」
バナナを貪り食べる小嶋
小嶋
「やはり旬のものを産地で食べるのが最高です。あとなぜかバナナが似合うといわれます。」
power
「似合い過ぎです。それにしてもスポーツにはバナナは欠かせません。私もよく食べます。バナナの皮はポイ捨てしても環境を破壊しないので安心ですね。しかし例えばレース中、下にポトリと落とすと後ろの人が滑ってクルクルスピンするので要注意です。」
小嶋
「僕は自分で仕掛けたバナナですべるタイプなので皮は捨てないようにしています。むしろレースでは前の人を倒せる亀の甲羅(赤)のほうが有効だと考えます。」
power
「さて、最後の最後になりましたが、先輩として聞いておきたいことがあります。つい数年まで弱小だった京大が今やトップに立つ選手を輩出したのは、ズバリ先輩達の功績も関係していると思いますか?」
小嶋
「人間が育つのに環境という要因は大きいと思います。僕が入部した時すでに自転車競技部には全国大会優勝への道が見えつつありました。例えば、春の白浜合宿をはじめとする距離を乗る習慣、徹底的な個人練習主義、そして4年上の先輩が見せてくれた全国大会入賞のレベルなどです。このさまざまな環境は過去の先輩達によって築き上げられてきたものです。また多くの先輩にいろいろな面でお世話になりました。よってズバリ先輩たちの功績は大きいでしょう。」
power
「はい、大満足です。さて、そろそろ帰ります。これからも活躍を期待しております。今日は楽しかったです。どうもありがとうございました。」
小嶋
「こちらこそ。」

勝利を欲する乗り方、結果を求める心。そのモチベーションの高さが今期の彼の成績に導いたのでしょうか。小嶋氏は、よく練習したと言っていました。ロード選手に求められるのはひたすらに練習できる才能なのでしょうか。わかりませんが、彼の得た結果は単に彼の努力を反映したものだったことは間違いありません。

単に強いだけではありません。大きな図体に隠された繊細な心。それが小嶋氏の真の魅力です。

でも何よりも、大学を先に卒業した者としては、小嶋氏を含め後輩がこんなに強くなっていることが嬉しすぎ!なのでそこんとこヨロシク。


power ( 2001/11/30)


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