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「国際自転車競技者橋川健」 power×橋川健氏

みなさんこんにちは。お元気ですか?私も元気です。2002年02月は現在日本を代表するレーサー、橋川健氏へのインタヴューをお送りいたします。
15歳より自転車に乗り始めた氏は現在31歳。この16年間、氏は海外と日本を行き来しながら、様々な輝かしき戦績を刻んでこられた。
欧州中心の自転車競技に身を置き、第一線で活躍する男の自転車に寄せる思い、考えは何か。
本年も間も無く海外へ発つというお忙しい中、氏の重みある言葉が極寒の冬の空気を熱く熱く熱すインタヴュー200202!



power
「こんにちは。どうぞよろしくお願いします」
橋川
「こちらこそよろしくおねがいします」
power
「まず、簡単な自己紹介をお願いします」
橋川
「え~、橋川健です」
power
「もう少し、おねがいします!」
橋川
「S45年5月8日生まれの31歳です」
power
「わかりました。Sは昭和のSであり、西暦のSでは無い事に注意したいと思います。て間違えるヤツなんかおりませんね」
橋川
「いませんね」
power
「やっぱり。ではまずズバリ、自転車の雄と言えばロードでしょうか?」
橋川
「やっぱロードでしょ!」
power
「ああそうですかー。私もそうではないかと思っていました。では、自転車は面白いですか?好きですか?」
橋川
「面白いし、大好きです」
power
「レースをすることが面白いのでしょうか、それとも自転車に乗ることそれ自体が面白いのでしょうか」


橋川
「レースに臨む時の緊張感も好きだし、目標を達成した時の充実感は、今の俺にとっては自転車しかないから。完全休養で数週間自転車に全く乗らない時期があるんだけど、その後、トレーニングを開始する、1月なんかはなんか、自転車に乗っているだけで嬉しくなっちゃいますね」
power
「乗っているだけで嬉しくなるのって素敵ですね。自転車に乗るのが職業の橋川さんがそうおっしゃるのならば、自転車は破壊的に面白いということですね」

ツールド北海道2000での1コマ。橋川選手は一番前!ガンバレー!

ツールド北海道2000での1コマ。橋川選手は一番前!

橋川
「5年前も、今もモティベーションも、やっている事も同じなんだけど、ただ、気持ちに余裕ができたのかな……今は自転車を楽しめるようになったよ」
power
「今までで最高に練習した、もしくは辛かった練習について教えてください」
橋川
「週42時間」
power
「それは・・・すごいですね。まさに乗りすぎ!ロードの練習時間は他のスポーツと比較してもかなり長いですが、どう思いますか」
橋川
「今はプロでフルタイムサイクリストだけど、23才までバイト生活だったから、バイトと練習で1日24時間では足りなかったよ」
power
「時間が有り余っている学生とは違い、努力されていたんですね・・。はて!思い出しました。相対性理論によると、速度が出ていればいるほど時間の進み方が遅くなる。これを用いれば他の人よりも沢山練習が出来るわけですね。は!さらに思い出しました!この注意点は、これが相対的な時間の進み方であって、本人にとっては同じ時間なのでした。お役に立てなくて残念です。速度といえば、今までの最高速度は時速何キロメートルですか」
橋川
「うーん。詳しくは覚えていないですが、そう言えば高校生の頃、52×13で平地&カーペーサーで100km/hでました」
power
「平地で。高速道路を走れますね。転んだら大変なことになりそうです。今までに事故にあわれたことがあれば、教えていただけますか」
橋川
「いっぱいあるよ」
power
「例えばどのような?」
橋川
「ジャパンカップの1週間前の練習中に落車して、顔を3針縫って、肋骨も折れたまま走った」
power
「キャオー!怖すぎです!」
橋川
「他にも言いきれない程、沢山あるのだけど」
power
「いえ、もういいです!違う話題にしましょう。爽やかな話題に。お好きな果物は何ですか」
橋川
「夏みかん」
power
「そうなんですか!いやいや、さっぱりしました。余談ですが、私は桃が好きです。余談でした。食に関してですが、私が大学で毎日練習していた頃は食べても食べてもまだ食べられる、という感じでした。橋川さんは1日にどれくらいのご飯を食べられますか?」
橋川
「オフで1膳、シーズン中で3膳+おかずくらいかな?特に多い訳ではないと思います。歳だからかな?」
power
「確かに多いというわけではないかもしれないですね。しかし3膳というのがカロリー消費の多さを伺わせていますね。さて、橋川さんは海外を拠点にして乗っていらっしゃいますよね」
橋川
「今年ももうすぐベルギーに行くんですよ」

power 「うおー。頑張ってください!それで、20歳で渡欧されて以来、ヨーロッパやアメリカを行き来されていますが、日本と比較してどのような違いがありますか?」
橋川
「レース展開で言えば、日本は守りに入っている。皆が守っているから、攻めている選手がいても、泳がされて終わってしまう。00年の鈴鹿で攻めのレースをしたんだけど、某誌で「泳がされて、無駄な動きが多い……」と批判されたんだけど、俺に言わせりゃ、逆なんですよね。守りに入っている、周りの奴を批判しろよって!でも、向こうのレースは、じっとしていたら、自分が置いていかれる。例えば、大井埠頭のレースで集団の中にいて、千切れなかったら、集団ゴールまでいけるでしょ?でも、ヨーロッパのレースは1人逃げて、2人逃げて、3人逃げてって繰り返されて、気が付いたら、30人の先頭集団ができていいる。自分は集団から千切れていないのに、完走すらできない。そんなレースばっか。自分から動けないヤツは通用しないんだよね」
power
「なるほど。しかしながら、おっしゃる点は以前から言われてきていることですよね。ひょっとして結局日本のロード界は前進していないのではないでしょうか。それでは、アメリカはどうですか?」
橋川
「アメリカは、カテゴリー分けがあるんだけど、各層が薄いから、結局レースはゴチャゴチャになっていて、上はとんでも無く強いプロがチームでエントリーしている。だからヤツ等と逃げが決まる時のトップスピードもヨーロッパのアマチュアレース、今はもうアマチュアとは呼ばないけど、兎に角その比では無いくらい速いし、それを追う集団もめちゃくちゃ速かった。まぁ、彼等もプロなんだけどね」
power
「どちらも気迫が違うのですね。ああ、一度走ってみたいです。橋川さんとしては、日本のロード界に望むことは何ですか?」
橋川
「専門のプロコーチ。自転車を走らせる動きを人間工学的に見て、分析し必要な筋肉の動き、トレーニングを説明できるコーチがいないんですね」
power
「なるほど。確かにそうですね。スピードスケートでも専属のコーチがいるのに、自転車では聞いた事が無いですね。そんなコーチがいたら。て、橋川さんが将来そのような役割を・・・。勝手に期待してます。海外での言葉は大丈夫ですか?」
橋川
「どうなんだろ?俺が聞いてみたいヨ(笑)ちゃんと通じていると思うよ。今は」
power
「最初は苦労されたんですか?」
橋川
「20才で行った時は殆ど通じていなかったけど。ベルギーはフランス語圏とオランダ語圏があって俺が生活しているのはオランダ語圏なんだけど、オランダ語って英語に似ているから、殆どの人が英語も話せて、俺のなんちゃって英会話でもなんとか生活できちゃっているんですよ」
power
「ヨーロッパで最もロードが盛んだと感じられる国はどこですか?」
橋川
「ベルギーかな?」
power
「流石は自転車先進国と言われるだけあるんですね。ああ、一度行ってみたいです。今までで最も印象に残っている良かったレースと、悪かったレースについて教えてください」
橋川
「良かったレースは97年のG.P.ノルド パ カレ。プロ+アマのオープンレースだったんだけど、出走が200人くらいで、20人くらいの逃げが決まり、そこから絞られていって、ラスト10kmで当時のプロのフランスチャンピオンでカジノだったステファン・バルト、同カジノのマルク・ストリール、TVMのラルス・ミカエルセン、オランダのアマチュアと俺の5人の逃げが決まり、3位だった。ラスト2kmで「飛び出すか?」と思いながら動けなかった、あの時の緊張感は今でも覚えていますね」
power
「たったこれだけの説明でも、緊迫感が伝わってくるようです。野暮な質問かもしれませんが、その場面では、なぜ動けなかったのですか?」
橋川
「S・バルトはフランスチャンピオンのスプリンターで、彼を勝たせるためのアシストとして、M・ストリールがいたし、L・ミカエルセンだって、3大ツールで区間優勝しているような選手だし……蛇に睨まれた蛙だった」

G.P.ノルドパカレのゴールシーン!橋川さんは一番右!ガンバレー

G.P.ノルドパカレのゴールシーン!橋川氏は一番右!

power
「悪いレースはどうでしょう?」
橋川
「悪かったレースは沢山あって、‘特に’悪いレースは無い。みんな同じくらい悪い!!」
power
「『悪いものは悪い』と。ところで小耳にはさんだのですが、アームストロングと同じ部屋になったことがあったとか」
橋川
「ええ」
power
「彼の印象はどうでしたか?」
橋川
「T.T.の前日だったんだけど、ベッドの上で胡座をかきながら、ワンピースの綻びを直していました」
power
「あまり込み入った話はされていないとお見受けしました。しかし自分で直すんですね。『僕のワンピースの綻び、直してYO』とでも言われていたら・・・と恐れていました。杞憂でした」
橋川
「そんなヤツはいないでしょう」
power
「やっぱり。他の人頼みばかりではいけませんね。反省します。機材のメンテナンスは好きですか?機材へのこだわりはありますか?」
橋川
「あるある。基本的にホイール組みは自分でやってます。自分の自転車に関してはメンテに自信があるから、信用できるメカニック以外にはあまり触らせないですね」
power
「自転車のパーツの中で、最も好きなパーツは何ですか」
橋川
「リアメカ。その時代のメーカーの主張をヒシヒシと感じます」
power
「自転車(ロード)はクールだと思いますか?」
橋川
「思う、思う!自転車も大好きだもん。走るだけの機能を追及したトラックレーサーは綺麗だし、折り畳み方に拘っているフォールディングバイクもカッコイイよ!あと、シマノのデュラエースAXとか、カンパの50周年とか……」
power
「機材面からしてもロードはバチグンなのですね。ではロードに乗っている自分はクールだと思いますか」
橋川
「全然思わない。全日本タイトル獲るなら、BMXのフリースタイルとかが良かった……」
power
「アラ。しかし、『初レース前夜は”勝ったらどうやってウィニングポーズ取るか”を考え過ぎて眠れなかった』とのことですが、このような"アホ"なことを考えたりすることは、自転車においてどれほど重要だと考えますか?」
橋川
「無謀というか、恐いもの知らずというか……」
power
「守りに入らない、ということでしょうか。では、今まで出会った中で最も"アホ"だった選手は誰ですか」
橋川
「三浦恭資選手。00年の北海道のクリテで1周目から逃げを決めたり、34才で海外を中心に競技活動するなんて、賢い人ではできない。でも、自転車で極めるには賢いだけの人じゃダメなんだと思う」
power
「なるほど。三浦選手にしても、橋川さんにしても、30を超えて死ぬ気で自転車に乗っていらっしゃるところが社会的に見てアホ=超クールだと思います。ところで、昨年のインカレロードを制した小嶋と話をした時に、『4年生になって、どうすれば強くなるのか、どのように強くなるのかが分かってしまったので、面白みが無くなった』と言っていました。私は彼のレベルまで到達していないので、そんなものなのかなと感じることしか出来なかったのですが、練習をして強くなることに関して橋川さんはどのような感触を抱かれていますか」


橋川
「彼は、そのレベルでしか、モノが見れなかったんだと思う。これまで、自分なりに色々考えながら全力でやってきたつもりだけど、今年、他競技の一流選手達と合同合宿を行ったんだけど、まだまだ、やらなきゃいえない事が沢山あった。だから今も自分を開発する事がとても楽しい。今、自分が20才だったら……って思うよね(笑)」


power
「橋川さんは昨年のツールド北海道では優勝候補の筆頭だったにも関わらず、結果は5位に終わりました。何が問題だったのでしょうか?少し失礼な質問かもしれませんが・・・」
橋川
「まぁ、優勝候補の筆頭でダメなレースっていくらでもあるよ」
power
「それはそうですよね」
橋川
「ロードで勝つ為の要素は沢山必要だけど、特に体力+知力+運が必要だと思う。例えば、誰かが優勝候補だったとしても、勝率にして20%くらいしか持っていない。他に10%持っている選手が3人、5%持っている選手が8人、1%が・・・・・・・って具合に、勝率が一番高いだけで、勝率が極めて高いわけでは無いと思う。だから、勝つべき時に勝てる選手って凄いと思う」
power
「是非ドカドカ勝って下さい!今期の調子はどうですか?」
橋川
「どうだろ?今年の前半はあまり力まずやります。6月中旬以降からピークがきて、6月にベルギーで2勝、7月に3勝、8月に3勝・・・・・・・あれ、10勝に足りないぞ・・6月3勝、7月4勝、8月3勝でヨーロッパ10勝!」
power
「バッチリの計画ですね。楽しみにしています!さて、今からヨーロッパに出向かれる方に尋ねる質問ではないとは思うのですが、気にせずお聞きします!将来的に自転車を辞めること=引退を考えることはありますか」
橋川
「レース引退はよく考えているけど、自転車は辞めないと思う。なんらかの形で一生関わっていくと思う」
power
「競技としての見方のみではなく、生活から自転車を捕らえていらっしゃるのですね、ふむ。で、『なんらかの形』で、何か具体案があったりしますか?」
橋川
「なにしよう?」
power
「いまのところは、無、い、と。メモしました。では、適当に質問させて下さい。車好きでポルシェに乗っていらっしゃるとか。車と自転車の違いは何でしょうか?」
橋川
「ポルシェは4輪でエンジンが後ろに付いてます。自転車は2輪で足で漕ぎます……」
power
「深い洞察を示す言葉ですね!それで橋川さんの好物と言えば、チョコレート。そのこだわりを一言で表すとどうなりますか」

橋川氏は決して”アホ”なことをおろそかにしない

橋川
「一言では言い表せる事ではありません!!最近、ビターブームですが、ビターならいいってわけではありません!」
power
「・・・・怒られタ。あ、どうぞ」
橋川
「70%前後がベストかな~。あとはシュガーの分量・・・・・あと、冷蔵庫でチョコを保存する人がいるけど、あれは、真夏ならまだしも、ダメ!舌触りが悪くなる!!」
power
「うむむ。この一方ならぬこだわり。敬服いたします。そんなこだわりの男、橋川さんであることはわかりました。試合中は何を考えているんですか?」
橋川
「『おっ!キレイな女!!』『あっ、ポルシェ!!』『疲れた~、まだ4分の1かよ』等々」
power
「これまた哲学的なことを考えていらっしゃるのですね。ロードレースは頭を使え!ということではないかと察します。では最も好きな言葉は何ですか?最近私がはまったのは『ソルトレークもぜんぶやる』でしたが」
橋川
「天才は有限、努力は無限」
power
「・・・・アホなことを言った私を許してください。では『自転車がもっと○○○であれば良かったのに』に当てはまる○○○は何ですか?」
橋川
「メジャー」
power
「やはり。外国を経験しておられる橋川さんだからこそ、強く思われるのかも知れないですね。ところでメジャーといっても、長さを測る道具のことと間違えないようにしたいです。そんなヤツはいませんか」
橋川
「絶対いません」
power
「で、次は世界中の誰もが気になっている質問です。橋川さんといえば眉毛ですよね。何かコメントをお願いしたいのですが」
橋川
「最近、枝毛が目立つのですが、どなたか、良い美容院紹介してくれませんか?」
power
「最後の質問です。今、一番強い日本人ロード選手は誰だと思いますか?」
橋川
「私です」
power
「今日は長い間、どうもありがとうございました。今期も頑張ってください!」
橋川
「こちらこそ、どうも。頑張ります」


何事も広い視野を持つことは大切ではないだろうか。いや、知らず知らずのうちに井の中の蛙にならされてしまわないように奮闘することが、人として義務ではないだろうか。その点で自ら海外に視野を定め、その上で挑戦的な橋川氏は稀有な存在といえる。 あなたは努力は無限と言い切る橋川氏のコメントに何を感じただろうか?努力が先にありきなのだ。そこのあなた!分かっていますか!かく言う私が一番分かっていません。テヘ。 これからも是非素晴らしい成績を残して、日本ロード界を牽引していっていただきたい!といいつつ、やっぱりロードはバチグンなのですね。 A bientot 200202!CIAO!

power : (2002/02/28)


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