「アニメーター」 power×高坂希太郎氏
ご存じのように高坂希太郎氏は、アニメーターです。映画「アンダルシアの夏」の監督です。まさに日本のアニメを牽引しておられる方です。さて、アニメと自転車はどのような関係なのでしょうか。世界中の誰もが知りたいこの問いの答えを得んとpowerが久々のインタビューを通じて切り込むインタビュー@スタジオジブリ!(注:映画「茄子 アンダルシアの夏」はスタジオジブリの作品ではなく、マッドハウスの作品です)

- power
- 今日はお忙しい中お時間を取って頂いてありがとうございます。
- 高坂
- いえいえ、とんでもございません。
- power
- 実は本心を申しますと、およそ3時間程度かけてまずはじっくり丁寧に自己紹介を、それから5時間程度かけてしりとりをし、その後1時間程食事を楽しみ、それから2時間程度昼寝をしてからインタビューに取りかからせて貰えれば、と予定を考えていたのですが、高坂さんは絶対にお忙しいと思いますので余計なことは割愛致しまして、早速始めさせて頂きます。一番最初に自転車に乗られた時のことを覚えておれらますか?
- 高坂
- 小学校3、4年生だったと思います。結構大きめの自転車なんですけど、補助輪をつけていました。
- power
- 小学校3、4年生!遅いですね。
- 高坂
- ええ、確か1年の時には乗ってなかったと思います。周りの友達もそれくれいから乗り始めていましたね。
- power
- へえー。早く乗り始めたから良いとか悪いという訳では無いですが。それで、それからロードに出会われる迄には時間があったと思いますが?
- 高坂
- 中学生位でぱったり自転車は乗らなくなったんです。このスタジオに入るようになってからですね、乗るようになったのは。家に7台持っている一人自転車が好きな人がいましてね、両親が住む長野に行った時に山道を走れるように、一台くらい欲しいなと思って相談したら毎日カタログを持ってくるんですよ。私は10万位出したら最高級の自転車が買えるだろうと思っていたんですが、10万のものなんて、カタログに載ってすらいないんですよ。
- power
- ははは。確かにロードは高いですよね。しかも、ロードが高いというのは案外ネタにされている事だと思います。私もよく「自転車、どれくらいするん?」と値段の事を尋ねられます。「30万くらい」と言っておけば大体満足してもらえるみたいです。でもそれでどうお感じになられたんでしょうか。
- 高坂
- 値段に圧倒されましてね、奥が深そうだなという気がしましたよね。
- power
- アニメの業界ではかなりの数の方が自転車に乗っておられる、とお聞きしています。ツールド信州というレースを開催したりとか。
- 高坂
- アニメ会のツールド信州は130人くらい出るんですよ。
- power
- 130人、それは多いですね!試しに素因数分解すると2×5×13=130ですが、兎にも角にもレースが成立する人数が揃っている訳ですね!
- 高坂
- ええ、97年に1回目で、もうひとつのツールド信州より一年早いんですよ。
- power
- あの近藤君の主催するツールド信州ですよね。今年は高坂さんも参加されたんですよね。で、両方とも“ツールド信州”でどうも紛らわしくていけません。なので、合体!という案はどうでしょうか?
- 高坂
- それ、面白いですよね!でも、レベルが違い過ぎますか。アニメの方は殆ど乗っていない人たちがばかりですから。でも、上位何人かは参加できるかもしれないですね。
- power
- 上位何人、その先頭に高坂さんがおられますよね。えー、はっきり言いまして、ズバリ高坂さん、お強いですよね。ロードで強くなろうと思うと距離を乗っていなければなりません。で、高坂さんは1か月1000kmを目標としておられるとか。
- 高坂
- そうです。一日30kmくらいですね、通勤で。日曜日は乗れないんです。日曜日に乗りに行くと奥さんに怒られてしまいます。たまに乗りに行っていいよ、と言ってもらって乗りに行く感じです。
- power
- なんとまあ、所帯を持つとそういう事になってしまうんですか!私は現在のところ韓国語でチョンガー、日本語で独身ですので、休日に誰にも怒られずに自転車に乗れることを幸せと感じるようにします。それですと現状ですと高坂さんは、隙あらば乗りに行きたい、という感じでしょうか。
- 高坂
- そうですね。でも仕事が終わると、一月くらいぽかん、っと開いている時間ができるので、そのような時は四国を回ったりとかするんです。
- power
- 四国、いいですよね。私が始めてした長距離ツーリングは四国でした。山の深さに圧倒されたのを鮮明に覚えています。で、高坂さんも四国を回られるということは、ツーリングもされるんですか?
- 高坂
- ツーリング、そうですねー。長距離の練習、ですか。親が長野にいますんで、それを拠点としてあちこち走りまわったりとかします。
- power
- ということは、レースを常に意識したとした“練習”としての乗り方ですね。
- 高坂
- そうですね。それまでは同じ会社の仲間うちで乗っていたのが殆どだったんですが、レースを通して知り合った人たちも増えて、それが楽しいんですよ。そう言う人たちと走れるためにはやっぱり練習しなければいけないじゃないですか。
- power
- ついていくためには、必要ですね。ちなみに乗っておられる自転車は何ですか。
- 高坂
- ピナレロのパリとプリンス、クラインのMTBです。でも山道を走ることはなくって、ブロックタイヤで通勤しているんです。
- power
- あれ、通勤はマウンテンなんですか?てっきりロードかと思っていました。
- 高坂
- そうなんですよ。MTBの方が場所を選ばないといいますか、気を使わなくて済むので、結果的に早かったりするんですよ。
- power
- それで一月1000km稼ぐ、と。
- 高坂
- たまにロードに乗りますと、本当に軽くて楽に走れるので、ちょっと疲れた日にはご褒美として乗ったりします。
- power
- はははー。今の今まで口チャックで黙っていましたが、告白してしまいます。私もピナレロのプリンスに乗っているんです。
- 高坂
- どうですか?
- power
- 前は鉄に乗っていたので、すごく乗り味が変わってしまったので驚きました。でもコンパクトにまとまっているような印象です。どうですか?
- 高坂
- 僕はロードはパリが最初だったんですが、較べると振動が少ない気がしますね。すごくスムーズに加速して。柔らかいけど、堅い。微妙にバランスを取ってふんばってくれている・・・て何かのインプレッションのようですね。
- power
- 「よう」よりは、インプレッションそのものです!全くもう。プンプン。勝手に怒ってみました。今でもパリには乗られることはあるんですか?
- 高坂
- ええ、練習用です。
- power
- 練習用!乗り分けておられるんですね。
- 高坂
- そうですねー。でも乗り分けていると言うほどではありませんが・・。
- power
- まあ、そういう私もプリンスは練習用です。そして決戦用です。一台しかありません。今年これから残されたレースと言いますと、ツールド沖縄でしょうか。何度か出ておられますよね。
- 高坂
- 今年で5回目かな。2年連続13位だったんですよ。
- power
- メチャクチャ凄いです。ハチャメチャに強いです。強過ぎです。匙を投げたくなります。出来レースです。もう嫌になります。世の中何が正しいのか分からなくなります。2年連続13位とは。
- 高坂
- いやー、でも内容が違いますね、はい。
- power
- と、おっしゃいますと?
- 高坂
- 去年はあまり走り込んでいなかったので、後ろで休みながら13位だったんですが、その前の年は比較的先頭を引いたりしていたんですよ。
- power
- 最後の峠、“源河”の坂が厳しいですよね。
- 高坂
- ええ、まあ。でも、あまりきつい坂でもないですからね。かなりの人数が集団であの坂を越えていってしまいますし。それからが更に勝負と言う感じです。
- power
- そうですか・・。昨年私はそこでちぎれてしまったので、何も偉そうな事はいえません。むしろあの坂の辛さに屈服しました。とはいえ、13位でゴールするとなると、位置取りなどシビアに争そっておられるとお見受けしました。
- 高坂
- うーんそうですけど、なんか、運不運がありますね。
- power
- それは水ものであるレースですから至極当然かもしれません、それでも13位は運不運で得られる順位では無いですよー。今年の調子はどうですか?
- 高坂
- うーん、不安ですねえ。ぺぺの様な走りはできそうにないですね。
- power
- おっとー!今のコメントは、なんとも格好いいです!ひょっとして、ギリギリで勝ったペペなんかよりも、楽勝、という風に捉えておきます。応援しますので頑張ってください。
- 高坂
- ええ。それからツールド信州に出たメンバーも、沖縄の試合に何人か出る予定なんですよ。
- power
- アニメの仕事についておられる方で高坂さんと同じくらいの足の人はおられるんですか?
- 高坂
- いやーいないですね。
- power
- やっぱり!強すぎるんですよ、高坂さんが。しかし、同じ集団に知っている人がいるとかなりほっとするものですよね。レース中、集団でふと横をみると、「おお、キミかー、調子どう?」となることもありますよね。
- 高坂
- そうですよね。艱難辛苦を共にすると、えもいわれぬ連帯感がありますよね。
- power
- それは確かに。ところで艱難辛苦とおっしゃいましたが、自転車ってかなりしんどいですよね。私はしんどいのが嫌でたまりません。それから、注射も怖いので、いやです。そして、好きじゃないのはホットミルクで、好きな果物は桃です。
- 高坂
- そうですか。
- power
- そうです!あ、すみません、本題からほんの少しだけ逸れてしまいました。レースには通常の生活では体験しないしんどさがあると思いますが、いかがですか。
- 高坂
- いや、レースは楽しいですね。練習の方が辛い。レースって、集団の中だと足を休められるじゃないですか。でも、僕は練習が殆ど一人なので、練習の方が辛いです。
- power
- レースの速度って練習よりも絶対に速いじゃないですか。その分強度も高くなりますよね。レースの上りは、もう筆舌に尽くし難いものがあると思うのですがいかがでしょうか?
- 高坂
- ええ、足の揃った人たちと一緒に走る、そのものが楽しいです。
- power
- なるほど。あくまでも楽しい、と。私がクライマーで無いだけみたいです。しかし、本当にレースがお好きなんですね!年間どれくらいの数のレースに出場しておられますか?
- 高坂
- 通常は3レース位ですが、今年は5レース出てます。少ないですけれども。
- power
- いや、多忙の中、それだけコンスタントに出ておられるんですね。もう、これは自転車中毒です。実は先程お会いした時からお見受けした限り、高坂さんは、もう健康そのもの、という感じで。日焼けもバッチリで、自転車やっているという匂いがプンプンしてくる気がするんですが?
- 高坂
- いやーそうですねー。ジブリの中にいると違和感がありますねー。
- power
- 良い違和感だと思いますよ!ジブリに自転車に乗って来る人がいますか?
- 高坂
- いますよ。美術館の人も入れると二十人以上ツールド信州に出るくらいですから。
- power
- いやはや多いですねー。ちなみに、通勤などを考えますと東京の自転車環境は厳しいと思うんですが、どうでしょう?
- 高坂
- 悪いですよね。ただ、僕は都心の方には行きませんので、環境に恵まれている方だと思います。都心に通勤などで行かれる方だと、毎日危ない思いをしながら、車と喧嘩をしながら走っておられるんじゃないでしょうかねー。
- power
- きっとそうでしょうね。ところで、関東には山が無い!と山に囲まれる京都出身の私は憤然としたのですが、関東は平野ですよね。
- 高坂
- ただ、多摩川の向こう側は丘陵地帯で、アップダウンが多いですよね。都心も結構アップダウンがあるんで。でこぼこしていますので、平野ではないですよ。
- power
- 実は誰にも言わないで下さい、私もこの間まで横浜に居りましたので、多摩川沿い、川崎街道などを走っておりました。
- 高坂
- はい、割とサイクリストには有名な坂があるあたりですね。20%越える坂もありますしね。
- power
- あそこですね。ありますよね。でもそういう所を走って強くなって居られるんですね。
- 高坂
- ええ、そういうところでトレーニングして横着してます。
- power
- いやいやー。横着だなんて。“ズルしてる。”と言って下さい。って同じでした。はい。ところでこれは雑誌で高坂さんが仰っていたことなんですが、自転車に乗っていて風と同じ速度になったとき、周りの音が聞こえなくなって・・
- 高坂
- たまらない。と。そうなんですよー。
- power
- 自転車に乗っていると、通常の生活では受けない感覚を得られますよね。
- 高坂
- ええ、でもこれほど自転車に乗っていると、今では新鮮な感覚というものに欠けてしまっているところはあるんです。それでもやっぱり周りの音が無くなったときには気持ちいいですね。
- power
- なるほど。自転車に乗る楽しみって、どういう所に宿っているとお感じになりますか?
- 高坂
- うーん、難しいですねー
- power
- あまりにコアな質問でしたか。
- 高坂
- いやあ、色々あると思うんですよ。これくらいまで行けるかな、と思ったらもうダメで、裏切られたりすることとか、自分はここまでしか行けないんじゃないか、と思っていたら、さらに行けたりして。
- power
- それは、如何に速く走るか、と言う観点でですか?
- 高坂
- そうです。
- power
- やっぱりレース指向なんですねー!
- 高坂
- いやあ、だって最初始めた頃なんて読売ランドの坂でも途中で降りようかと思いましたが、2、3回登ると楽に登れるようになって、今ではもう坂とさえ思わなくなって・・。大垂水峠も、こんな辛いところ無い、と思って登った時期もあったんですが、今では丘みたいなものじゃないですか。自分の身体ってすごいなあと。お世話になっている自転車屋さんのチーム員が180km走ったなんて聞くと信じられなかったんですが、今では出来てしまうんですよね。
- power
- 坂を坂とも思わなくなって、長い距離も長いとも思わなくなる。確かに人間の体ってすごいですよね。えー、因みに最近の私は、坂を坂とはっきり認識し、長い距離を本当に長いと感じるようになりました。ああ、あの頃に戻りたい・・・。それで、今まで自転車に乗って来られて、どのシーンが一番焼き付いていますか?
- 高坂
- 一番最初のアニメ界のツールド信州です。97年です。死ぬかと思うような体験をしたときですね。熱射病で、鳥肌が立っているんですよ。いやあ辛かったです。後にも先にも無いですね。もうレース後倒れ込みたい!という感じでした。
- power
- 私も寒かったりしんどかったりした思い出はありますが、それ程までのギリギリの体験はありません。相当きつそうです。
- 高坂
- そうなんですよ、ところがその時宮崎さんが車で伴走していたので、ここでそんな無様な格好は見せられないと思いまして頑張りました。辛さと印象というのは繋がっていると思います。
- power
- なるほどなるほど。ところでお仕事ではかなり細かい作業をされると思うんですが、細かさで言えば自転車もディテールが豊かですよね。高坂さんは自転車パーツのうち、どれが一番好きですか?
- 高坂
- ブレーキアーチが・・・。
- power
- また地味な・・。
- 高坂
- 最初「アンダルシアの夏」をやっていてですね、パーツを理解しないと構造が描けないんですよ。もっとも、エルゴパワーなどは中身が見られないこともあり、外見だけで描けますけれど。でも、ブレーキアーチは違います。アップのシーンもあるし、どういう仕組みなのかじっくり見たので印象に残っていますね。僕は形はカンパが好きなんですが、シマノの方がかっちり出来ているので、感心しながら見ていました。
- power
- ということは、好きなパーツはブレーキアーチだと。
- 高坂
- そう言うことになりますね。
- power
- なんとなく無理矢理言わせてしまったような気がしますが、気にしません!その鋭い観察に基づいて、「アンダルシアの夏」は、かなり描き込まれていますよね。苦労されたんでしょうねって、当たり前の質問ですけれども。
- 高坂
- 人が足りなくて、大変でしたよ。けれど、細部書き込みは好きなものですから辛さは感じなかったですね。スタッフの中には辛かった人もいたと思いますけど。ですが、自転車好きの人にも見てもらいたかったですし、そう言う人たちから「違うよ」と言われるのは嫌ですよね。その辺はなるべく期待に応えられる位までは描き込まないと。
- power
- あのー、車輪の円を描くのが難しいと聞いたのですが、どうですか。
- 高坂
- 確かにそうですが、こだわり出すと、きりが無いんです。かなりいい加減なんです。適当です。雰囲気のリアルさだけを意識してやっていました。
- power
- いい加減、適当で出来てしまうところが、すごいです。ところで自転車のアニメとして「アンダルシアの夏」は以前に例を見ないものでしたが、アニメと実写の違い、それを意識されたりしたんですか?
- 高坂
- いや、意識はしていないつもりなんです。描いている時は、実写のつもりで画面は作っていまして、出来上がったフィルムを見るとやっぱりアニメだ、となって、愕然とするところもあるんですよ。ただ実写って、役者さんがそのスポーツをやっているということはまずないし、そこで見る人が見れば大きな嘘が発生してしまいますが、アニメーションではそれが無い、ですよね。
- power
- なるほど。それで、突っ込んだ質問なんですが、実写の映像とそれに近づこうとするアニメを比較した時に、ストーリーは別として実写の方が優れていると言う考えもあると思うんですが・・
- 高坂
- いやいやーそれは、すごくあると思いますよ。実写にはかなわないですよ。情報量の多さには。その分、実写には出来ない誇張した、こうであったらいいのに、という画面を作ることが出来るので有利な点もあると思うんです。もうちょっと今回の作品でもそういうところを多く盛り込めたらいいと思っていたんですが、いかんせん自転車というものが初めてで、どこまで出来るか未知数でして、出来ないんじゃないかと言われてたし、僕もちょっとそう思っていまして・・。
- power
- んな、アホな。
- 高坂
- いやー、不安があったんですよー。シナリオからの画面作りの絵コンテで描いたときに、こんな画面を作っちゃって、誰が描くんだ、人もいないのに。どれくらいの量があるのか、こなし切れないんじゃないのか。という不安がいつもありましたよ。その辺の案配ですよね。本当はもっとぐわーっと迫力ある実写に無いカットを盛り込みたかったんですけど、やっぱりやめとこうかなと、簡単な絵にしちゃったりとか。
- power
- 今仰った実写に無いカット、なんですが、どのあたりのことを指しておられるのでしょうか?自転車レースの中継では、レース中の選手に併走しているバイクカメラの映像がありますよね。
- 高坂
- うーん、実は殆ど実写であるようなところです・・・。ですが、選手の横にぴったりとついたりとか、バイクカメラの入り込めないところ、例えばゴールスプリントの中に入り込むとかですかねー。
- power
- それですと確かに出来ないですよね。なるほどなるほど。ところで話題は変わるのですが、今後、アニメ界で自転車が取り上げられていく将来の展望はありますか?
- 高坂
- はは、どうでしょうかねー。けれども今年は結構自転車のアニメ作品があったんですよ。クレヨンしんちゃんの「嵐を呼ぶ!栄光のヤキニクロード」にも自転車は出来ましたし、大友さんの作っている「スチームボーイ」という作品の併作品で、モデルは大友さんとりんたろうさんなんですけどね。
- power
- どんな話なんですか?
- 高坂
- 単に多摩川のサイクリングを爆走するという。
- power
- 滅茶苦茶に面白そうです!
- 高坂
- もう完成しているんです、公開は来年になってしまいますが。変速機はシマノとカンパを足して2で割ったようなものになっていましたねー。僕もまだ見ていないんですが、りんたろうさんがかなり自転車好きなので、ディテールにも凝っていると思いますよ。
- power
- へえー。アニメは自転車旋風が吹き荒れている、と。それで、「茄子アンダルシアの夏」の今後の展開はどうでしょうか?
- 高坂
- 原作のアンダルシアの夏の続きで、ジャパンカップを題材にしたものがあるんですが、あれはちょっと劇場向きではないですよね。
- power
- 私も読みました。結構面白いんですが、劇場用アニメとしてはマニアック過ぎでしょうか・・。テレビシリーズではどうでしょう?
- 高坂
- テレビですか。実は以前、シャカリキがテレビシリーズになるか?というところまで話が進んでいたそうなんですが、やっぱり技術的な問題などで、無くなってしまったそうです。
- power
- そうですか。今回その技術面は、アンダルシアの夏がドーン!と牽引したんですね。
- 高坂
- そうですね。それに、コンピュータの普及が大きいですよね。手描きでは無理ですよね。
- power
- それは手間との兼ね合いですか?
- 高坂
- そうです。でも、手間をかけても無理ではないかという点もありましたね。
- power
- その点なのですが、アニメは手で描いてナンボなのに、とCGが使われていることを残念に思っている人もいるとは思うんです。昨今のアニメでCGが多用されることについて、高坂さんはどうお考えになっておられますか?
- 高坂
- そうですねえ。使い方なんでしょうけど。アンダルシアに関してはそれがなければ出来なかったわけですし、そうなっていくと思いますね。
- power
- そういう流れがあるということなんですね。ところで、アニメを制作されることと、自転車にのっておられる事を結びつけるとどうなるでしょうか?
- 高坂
- スケジュールのアップをゴールとすると、ヒルクライムレースに近いものがあります。加速の連続です。今も、ぼちぼち厳しいです。
- power
- 加速の連続ですか。なんだかいい響きです。高坂さんは上りか下りか、どちらが好きですか。
- 高坂
- ああ、僕はね、上りが好きなんですねー。上りというか、その後が好きなんですよ。ああ、ここまで来たかという達成感です。
- power
- それはアニメを作ることとリンクしていますか?
- 高坂
- うーん、実はアニメの場合、達成感がないんですよ。ゆるゆる終わるというか。
- power
- 完成したー、終わり。じゃないんですか?
- 高坂
- 違うんですよ。終わった順にスタッフが抜けていくんで。自分も自分の作業が終わった後に、まだフィルムチェックがあったりとか。まだ作品としては、音入れがあったり、試写会があったり、インタビューがあったりとか。ここが頂上だ!という感が希薄ではあります。
- power
- そうなんですかー。ところで脱線するんですが、アンダルシアの夏の音入れで、市川さんとお話になったと思いますが。
- 高坂
- あの人は・・・ホンモノですね。
- power
- 今、ホンモノ、と言われましたか?
- 高坂
- 自分に凄く自身がある方で、周りに翻弄されることがないですし。そういうのも魅力ではないでしょうか。テレビ放送の視聴者の人気も高いみたいですしね。テレビで普通言わない、そんな事も言える人です。
- power
- ズバズバ忌憚無く色んな事をおっしゃいますよね。
- 高坂
- そうですよ。気持ちいいですよね。しがらみなどで本当はこう思ってはいないけど、こういう事を言わざるを得ない場面とかあるじゃないですか。そういう意味では偽物なんですよ。そう言う時に市川さんのようなホンモノを見ますと、救われると言いますか。
- power
- やっぱり市川さんは、スゴイ方なんですね!思っていた通りだなあ・・・。いや、思っていた通りやなあ・・・。関西弁で言い直しても別にかわらない、と。っと、アニメの話でした。気を取り直して行きたいと思います。クリテリウムのラスト一周で踏み直す、見たいな感じで行きます。高坂さんのお仕事、アニメーターとは具体的にはどのようなお仕事なのでしょうか?
- 高坂
- キャラクターの動きを、芝居を作る仕事です。それとは別に、演出もします。頼まれれば何でもやると。
- power
- オールマイティーな能力が必要なんですね。それにはサイクリストとしての素質も必要なのであった。ナンテ。すみません。脱線ばかりでした。誤解を恐れずに質問させて頂きたいのですが、アニメと言うとオタク、みたいな世界が広がっていると思いますが、高坂さん自身はオタクなんでしょうか?
- 高坂
- うーん、オタクではないと思いたいんですが。自転車に関しては、自転車に乗っていない人からみればオタクかもしれませんね。でも、アニメオタクではありません。アニメは一つも見ませんからねー。
- power
- え?それは一体全体どういうことですか?
- 高坂
- 嫌いなんですよ。だから、アニメフェステバルに出品するから、と言われても絶対行きませんからねえ。
- power
- 嫌いなのは、仕事でもう充分やっているから、ということですか?
- 高坂
- うーん、アニメファンが嫌いでですねー。ちょっとバランスが崩れている、と言うような方もいらっしゃる訳じゃないですか。この人たちのために作っているんじゃない、と思ってしまうんですよね。
- power
- もっともっと普遍的に見てもらいたいと。
- 高坂
- そうですね、はい。なんか閉鎖的ですよね。今アニメーションって、アニメファンがアニメファンに向けてに作っているような面もありまして。まあそれで商売は成り立ってしまってはいるんですが。自分が見て育った、面白いと思ったアニメ、それは宮崎さんのものだったりするんですが、そう言うものを作っていきたいと。
- power
- なるほど。じゃあ、テレビシリーズを楽しみにしています!
- 高坂
- テレビシリーズ・・・。
- power
- ダメですか?
- 高坂
- 過酷ですね・・・。
- power
- こういうのはどうでしょう、必殺技があるんです、カシャカシャカシャーン!アウタートップで「タイガースプリント!」とか・・・。
- 高坂
- 今回の「アンダルシアの夏」は、そういう変化球がないのがいいかなと思っていましたんで。野球とかと較べると、マイナーなスポーツですからね。でもJskyスポーツでも多く放送していますし、徐々にですがポピュラーにはなってきているんじゃないでしょうか。いいことですよね。
- power
- ははーなるほど、今のお話を伺ってまとめますと、こういうことでしょうか。「やっぱテレビシリーズ!」
- 高坂
- 厳しいですよー。スポンサーの関係もありますし。
- power
- なんとかならないかナー、なんとかならないかナー、ピープー(口笛)
- 高坂
- いやいやー。確かにテレビが一番自転車の普及には効果的ではありますけどね。まあ、アンダルシアの夏も日テレでやると思うんですけど。
- power
- 過去に、「YAWARA!」を見た多くの女の子が柔道を始めたという話がありましたよね。
- 高坂
- やってる子なんて、いるわけないよ。と思っていたら、いたんですね。影響力が大きいんですよねー。中身はどうでもよく、とりあえずやってさえいれば。
- power
- ああ、早く自転車でもそんな現象が起きないでしょうか。楽しみしています、テレビシリーズ。っていい加減しつこくて失礼しました。では反省の意味も込めまして唐突な質問です!
- 高坂
- はい。

- power
- 自転車って面白いですね。
- 高坂
- いや、面白いですね。
- power
- そして、自転車はクールですか。
- 高坂
- 駆け引きの面ではクールさは必要でしょうが、熱い面がないと、クールな面が上手く作用しないと思いますね。ただクールなだけ、熱いだけ、だと滑稽な感じですね。
- power
- 何事もバランスが大事であると。そういうことでしょうか。私もそろそろ大人にならなければいけないな・・・あ、独り言です。続いて意味のない質問です。自転車を見たとき、どの角度が一番好きですか?
- 高坂
- 描くなら正面が一番楽ですね。
- power
- 僕は上の後ろから見るのが好きですが。
- 高坂
- うーん、どうですかねー。うーん、そうですねー。
- power
- 無茶な質問をぶつけてしまいました。タハ。
- 高坂
- やっぱり、チェーンリングを向けた、横の位置が一番キレイじゃないかな。一番端的に伝わってくるものがある気がしますね。
- power
- そうですかー。ところで原作がありはしましたが、今回の「茄子アンダルシアの夏」で一番伝えたかったことはどのような点だったのでしょうか?
- 高坂
- ホンモノ感です。
- power
- なるほど、ありがとうございます。今日はお忙しいのに長い時間どうもありがとうございました。いよいよ最後の質問なんですが、そして私は桃なんですが。
- 高坂
- はい何でしょう?
- power
- 高坂さんの好きな果物は?
- 高坂
- 果物ですか?何でも食べますけど。あ、携帯食のバナナは本当においしいですねー。
- power
- やっぱりレースのことしか頭にない!今日は楽しかったです。ありがとうございました!
- 高坂
- こちらこそ、どうも!
終始穏やかな表情の高坂氏は感動的な程、自転車に乗ることを愛しておられるのでした。私は高坂希太郎氏を、高坂監督、でも、高坂さん、でもなく、「高坂選手」と呼びたくなりました。それくらいサイクリストなのでした。アニメーターを狂わせてサイクリストにしてしまう。ああ、なんて自転車って、自転車って、ありとあらゆる人にとってバッチグンに面白いのでしょう!誰かこの面白さ、楽しさ、止めてー!
power(2003/11/01)
関連事項
- 「茄子 アンダルシアの夏」の公式サイト
- http://www.nasu-summer.com/
- 阿佐ヶ谷自転車倶楽部
- http://www.madhouse.co.jp/abc/index.html
- yomiuri online
- http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/
ghibli/cnt_interview_kousaka.htm
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