「自転車野郎」 power×待井剛氏
皆さんは自転車で世界一周をしたことがありますか?はい、あるよ、という方は、今すぐにブラウザを閉じたり開いたりして下さい。
6年間、117カ国。これが何を意味する数字か、お分かりですよね?なんと壮大な旅なんでしょうか。しかも全部、自費。 実際のところ、自転車で世界一周をした日本人は結構おられるそうです。ですが、待井氏はその体験をまとめておられるのです。
ホームページを見てください。→「出会いが宝」
私がこの、待井さんのホームページを見た時、時間が止まりました。こ、この写真はー!ほんまかいナ!す、すごすぎる。 電光石火のごとく早速リンクをはらせてもらい、待井さんにメールを書きました。 「リンクをはらせて頂きました。今後とも宜しくお願いします」
すると返ってきた返事は、「こちらこそ」みたいなものでした。はい、ここまでは普通ですね。エキサイティングでもなんでもありませんし。ところがですよ、そのメールの最後には、
自転車野郎 待井
・・・最高度にクールでした。
サイト上でも旅行について垣間見る事が出来ますが、CD-ROMに全てが載せられてるですって・・・よし早速ゲットだ!いくらかな?1,170円?はあー?安すぎ!
日々綴られた、かつよく推敲された読みやすい文章、さらには数え切れないほどのよく撮れた写真、1万枚。って多すぎー!プンプン。
私はこの待井さんのCD-ROMを読み耽りました、しかし・・・長すぎ!何日かかっても読み切れヘン。それもそのはず。待井氏はこのCDの内容を作成するだけで、帰国後、仕事をせずに2年以上費やしておられるのです。この待井氏自作のCD-ROM、ウルトラ☆バチグン2003おすすめです。自転車を愛し世界を愛するならば、読まなければ損、と申しますか、万難を排して読んで頂きたい。
「美しい・・美しすぎる」 とのコメントと共に載せられる写真は実際に美しい。まあビールでも飲んでけ、と言う人々との出会いはフィクションなんぞではない。共産圏の国々を走るスリルは今まで見たことのない視点。走行中にはまるマンホール、kさんに寄せる想い・・。ああ、もうこんなところでは全然いくら書いても書き切れません。
あまりのオモチロサに衝撃を受けた私は、おそるおそる 「あ、あのー。今日はいい天気ですね、ムニャ・・。インタビ・・・・ムニャムニャ」 と尋ねてみましたら、 「是非どうぞ!」 とのお返事。やっぱり自転車好きに悪い人はいません、ホ。
待井さんの見てきた世界とは。そして今の待井さんの世界とは。自転車とは。そして出会いが宝、とは!
インタビューを117倍楽しみたい方は、CD-ROMで今すぐ予習しておくことを激しくオススメしてしまいます。
桃を愛してやまないpowerが、2003年末、果敢に勇敢に優雅に、そして大胆に世界に挑んだ待井剛氏インタビュー200312!!!お楽しみにー

- power
- 待井さん、こんにちは。お会いできて光栄です。今日はどうぞよろしくお願いします。お忙しい中、すみません。
- 待井
- いえいえどうぞどうぞ、喜んで。ところで、あの「好きな果物は梨ではなく、桃です」というインタビュー、あれはpowerさんがご自分で?
- power
- つ、つまりそれはデッチアゲであるかということですか?
- 待井
- そうです。
- power
- 違うんです、あれはデッチアゲではなく、ちゃんと他の人にやってもらったんです。
- 待井
- そうなんですかー。やあ、あれには笑いました。「桃山高校です」とか。
- power
- いやあ、ありがとうございます。出身高校は京都府立桃山高等学校です。どうりで桃が好きなわけです。
- 待井
- ところでpowerさんは次男ですか?
- power
- はい、そうです。
- 待井
- やっぱりね。わかります。
- power
- え?ひょ、ひょっとして待井さんは、人の秘密を知ることができる・・・エスパー?
- 待井
- 何言っているんですか、違います。
- power
- やっぱり。わかります。
- 待井
- ところで、power's cycle diaryの目的って何なのでしょうか?
- power
- やっぱり、桃のおいしさを知ってもらうこと。これは譲れないんですが、待井さんだけにお教えします。これは町で人に尋ねられても口チャックでお願いしたいんですが、実は、「自転車の面白さを解き明かす」という崇高な陰の目的があるんです。現在の達成率は0.3141592%です。実力不足で失敗に終わっています。初めはレースの観点からしか見ていなかったのですが、徐々に自転車はどのように接しても面白いな、と、当然のことなんですが、気づいています。
- 待井
- そうですよね。
- power
- ただ、このサイトを通して自転車に乗らずにはいられなくなった人がおられるようで、例えばそれは山田君という人だったりするんですが、影響を受ける人もおられて、嬉しいなと思っています。
- 待井
- へえー。山田さんは大人になってから自転車にはまられたんですね。それはすごいですねえ。感化されてしまったんですね。
- power
- そうなんですよね。何歳になっても自転車の面白さは変わらないですよね。
- 待井
- 思い出しますが、僕も乗り出したのは高校一年生の頃ですよ。それからです、病みつきになったのは。小学、中学の頃ははまってはいなかったんですが、ツーリングの面白さに目ざめたんですよ。汗流して峠登って「やったあ!」とかね、おむすび食べて「うまいっ!」とか。ダウンヒルが「面白いっ!」とか単純に。それがだんだんとエスカレートしてしまったんです。
- power
- レディーに付き添ったり、と。
- 待井
- エスコート?
- power
- パンツルックではなかった、と。
- 待井
- もしかしてスカート。
- power
- 「地下一階、食料品売り場でございます」
- 待井
- それはエスカレータではなくエレベータ。
- power
- 世界の待井さんをこんな事につきあわせてしまって宜しいのでしょうか。反省します。
- 待井
- まあ、自転車に乗ってね、半分旅も混じっているんですよ。走っていて坂があったり、平らな道があったり、出会いがあったり。なんか縮小された人生みたいな、ね。ツーリングしていると。ちょっと極端ですけれど。何で好きなんでしょうねえ。わかんないですねえ。
- power
- 実は、今日はいくつか質問を考えてきました。
- 待井
- ええ。ど、どんな質問なんでしょう。楽しみですねえ。何を聞かれるんでしょう?
- power
- まずはご身長から!とか言ったりなんかしてもいいですか。
- 待井
- えー176のですねー。
- power
- 律儀にありがとうございます。参考にさせていただきます。
- 待井
- ははは!でもね、体重はひどい時には85くらいになってしまったんですよ。
- power
- え?85kgですか?ちょっと待ってくださいよー。計算計算っと。・・・それって大型トラックにして7台分くらいの重さですか?
- 待井
- いや、8台分くらいでしょうかね。一年ちょっと前の頃ですが、丁度旅行記をまとめていたときの事ですよ。座ってばかりで。
- power
- 俗に言う、幸せ太りですか?
- 待井
- そうそう、結婚した頃ですね。
- power
- しかし、私も実感しているんですが、自転車に乗っていた人が乗らなくなると、以前の調子で食べ続けてしまい、太る一方になってしまう事がありませんか?
- 待井
- そうなんですよ!来ましたよー。
- power
- しかし、旅行記の中で「一体僕のお腹はどうなってしまっているのだろう」というようなくだりがありましたよね。相当な量をたいらげておられたかと。
- 待井
- アンデスのあたりですよ。もうね、3、4件お店をはしごしてしまうんですよ。軽くペロリで。でも、あまり豊かで無い国で3杯も4杯も食べられないじゃないですか。あっちいって食べて、「ああーうまかった。次、行こう。」みたいなね。さらに食べて、「次の店、行こう。」これは、はしごですよ。一人前はしご。
- power
- うわお。お腹一杯になるんですか?
- 待井
- うん、一応なりますよ。でもね、帰国してからもですね、カレーのCOCO一番屋、1.3kg。あればっちり。ぺろり。牛丼のすき屋。期間限定で牛皿1.3kgと、飯が600g、みそ汁、お新香、卵2個。それを20分以内で食べたら無料、というのがありましてね。
- power
- ふむふむ。
- 待井
- 7分。
- power
- だあー!!
- 待井
- けっこううまかったですけどね。
- power
- ところでそれはいつの話ですか?
- 待井
- COCO一番屋は2回行ったんですがね、最初は帰国してから3ヶ月後くらいですか。もう一度目と牛丼は、ついこの間です。
- power
- まだ食欲が衰えていない!現役なんですね。
- 待井
- 現役ですよね。ちょっと胃下垂気味ではある。丁度サイクリングにはもってこいですね。牛みたいに食いだめができるという。
エストニアにて。泥酔するユルギさんの表情が魅力的 - power
- お酒は?
- 待井
- うーん。飲みますねえ。
- power
- 旅行中も沢山飲んでおられましたね。「飲みに行こう!」と誘われて飲み屋に行ったり。泥酔しているオヤジの写真が面白かったです。あれには笑いました。
- 待井
- ああー、ルーマニアだったかなあ。ああいうのが面白いんですよね。庶民的な出会い、というか、ね。
- power
- うーん。そうですよね。読んでいるだけで面白さが伝わってきますので、実際にそれを体験するとなると、相当な面白さなんでしょうね。いいなあ。さて、次の質問なのですが、これまで帰国されてから、世界一周の話は幾度も、あらゆる機会に話をしておられると思うんですが、世界一周とは一体何なんでしょうか?
- 待井
- きたきたキター!うーん、自転車世界一周。それはねえ、もう、夢でしたね。
- power
- 夢。

夢 - 待井
- 夢。それか、挑戦。この紙なんですけれどね。(・・・とおもむろに財布から一枚の紙切れを取り出す)
- power
- おお!これです!
- 待井
- これを見ると人生、ていう感じですか。挑戦。何でしょうか。夢の人生への挑戦。
- power
- 「挑戦」ですか。それは何となく素人の私にもわかるんですが、世界一周に行ってしまわれて、完了した現在から見ると何でしょうか?
- 待井
- そういう視点で見ると、ですか。・・・。糧、ですか。宝、ですか。行く前からすれば、結局悔いを残したく無かったんですよね。結果的には、良かったかなあ・・。世界一周は何だったんだろう・・・。今があるわけだし。世界一周に行っていなければ今もずっと諏訪にいたかもしれないし。やったから、今のかあちゃんとも出会ってここにいるわけだし。すごく多くの出会いがあったんですよ。うーん。うーん。何と答えればいいんでしょうか。
- power
- 質問がコアすぎましたか?
- 待井
- いやー。予習しておけば良かった!いきなり脳みそフル回転です。・・・世界一周とは。考えたことが無いですね。
- power
- 行ってきた直後はこうだったああだった、とあると思うんですが、それからしばらくたって振り返ってみたときに、世界一周というものがどのように咀嚼されるのか、お聞きしてみたいんです。
絶対成功人生プラン - 待井
- うーん。経済的な面で言いますとね、世界一周をした経験は、お金には全然なっていないですね。だけど・・・。自信、ですかね。それだろうなあ。私の親父に、 「一つ決めたことを最後までとことんやる、これができないならば他も駄目だ」 という教えがあるんですよ。それがあって、(日本一周の前に働いた)名鉄で100何万貯められなければ1000万は貯まらないし、日本一周ができなければ世界一周はできない。それが今、延長になっているんです。自転車もできた。では次もできる、みたいな。それですよ。具体的な出会いがどうたら、というのはあっても、精神的には自信がすごくつきましたね。一つ決めたことは挫折せずに最後までやり通した。それは結構でかいですね。走っている最中って孤独だったり、いろいろ強盗に襲われたり、不安だったりするんですが、最後までできたし・・。自信ですかね。今、仕事とか、へとも思いませんし。
- power
- やり抜いたという感じはお持ちですか?
- 待井
- ありますねー。たまに思ったりするんですがね、海外って自分の時間があって、お金があって、誘惑がいろいろあるんですよ。途上国に行けば超リッチマンだったりするわけですよ。そういうところで埋もれてしまおうと思えばゆっくりとしてしまって埋もれられるわけですよ。そんな誘惑がありつつも最後までやり遂げる。そういうのを考えればやっぱり自信、ですよね。・・・今思いついたんですが。
- power
- ふうーむ。自信、ですか。
- 待井
- ちょっと強気な事を言ってしまった、か、な?
- power
- いえいえ全然!
- 待井
- 後になって「やっぱり駄目でしたー」とか、なるかもしれませんがー!でも、格好よく言うとそうなりますかね。
- power
- どうぞ、かっこつけて下さい。おねがいします!
- 待井
- はははー。
- power
- ところで次の質問なんですが、世界一周、これは人に勧められるものですか?
- 待井
- 難しいですよね。この間も、世界一周をしたいというまだ十代の子と話をしたんですけれど、その子には行きたくないように脅しました。気軽な気持ちで行ったら大変な目に遭うし、強盗にも遭うし、交通事故にも遭うし、死んでる人も何人も知っていますし。そういう事があるよ、それでもやりたい?って。もし私の子供が行きたいと言ったら・・・。それを思うと私はうちの親に今すごく感謝していますね。もう命がけ、というかもう会えなくなるかもしれないですから。父親に「それでも行きたいのか?」と言われて、「行きたい」と言ったら、「それじゃあ」って言ってもらえて。親父と空港で分かれる時に握手して、最後かもしれないな、と思いましたね。命がけだし、死ぬかもしれない。それでも行きたければ、どうぞ。みたいな感じですね。経験としてはそれはもう、ものすごく面白いですよ。世界観みたいなものが変わるじゃないですか。でも、気をつけた方がいいよ。みたいなね。
- power
- そういう点で言えば、待井さんは強盗などに遭われてはいますが、かなり運にも恵まれていた、ということでしょうか。
- 待井
- それもあるかもしれないですよねー。どこかで間違えれば、ぐさり。とか。ありましたからね。しかし・・・これは一概に勧めていいのだろうか・・。いや、面白いですよ。ですが、親しい人とかでしたら、辞めておいた方がいいと言うでしょうね。powerさんあたりでしたら、パワーがあふれておられるでしょうから、「いやあ、行ってきた方がいいですよ、いい経験ですから」なんて、ね。
- power
- そんなそんな。ん?しかしそういえば、なんとなくできるような気がしてきました。気のせいですか?え?そんなに甘いもんじゃない?はいわかりました。あ、続きをお願いします。
- 待井
- うちの親はやっぱり凄いと思いますね。でも納得してもらえるまでに時間をかけて、本当にやるんだという意志をこつこつを示して来たから、諦めがついたのかもしれないですけれども。
- power
- 根拠のない自信によって勘違いしてしまう事が多いと思うんですが、待井さんの自信は本物、ですよね。広辞苑で「自信」とひいてみたら、「待井さんのこと」と載っていたりして。
- 待井
- そんな・・・
- power
- バカな。っと。えー。失礼しました。ところで、待井さんは自転車に乗って一周されましたが、他の乗り物で旅行するというのはあるのでしょうか。
- 待井
- ええ、ありますよ。原付50ccとか、リヤカーとか。ロバとかもありますよ。
- power
- リヤカーって、あのリヤカーですか?強者ですね!面白いなあ。歩いて世界一周っていうのはあるんですか?
- 待井
- 聞いたことがありますね。“てくてくクラブ”とか言うんですよ。
- power
- てくてくクラブ!いいネーミングです。気に入りました。略して、“てくてクラブ”で、どうでしょうか。
- 待井
- 一文字抜けただけじゃないですか!
- power
- ありゃ、指摘されればその通りです。兎にも角にも、待井さんにとって、移動する手段は自転車が一番良かったんですね。
- 待井
- そう、手頃なスピードですよね。車じゃ早すぎて、徒歩じゃ遅すぎて。自転車ならね。
- power
- 走っている途中にいろいろな出会いがあるんですよね。
- 待井
- そう。自転車はね、それがメインなんですよ。一方、バックパッカーは宿についてからが勝負。さあ、町を見るぞ、と。自転車野郎は宿ではぐたーっとしてるんですよ。休むぞ、と。
- power
- 全然違いますね。
- 待井
- 途中が面白いんですよ。いろんな商店に行って話をしたりね。
- power
- その、会話なのですが、結局スペイン語はかなり話せるようになられたんですか?
- 待井
- 知っている単語の数でいえば英語の方が多いんですけれど、中南米のスペイン語圏の国に長くいた、結局1年半くらいいましたかね、それと、学び始めたのが若かったというのとで。誰でもそれくらいいたら、「こんにちは」「これいくらですか」「もっと安くして」とか、言えるようになりますよ。私でさえこれくらいなったのですから、普通の人でしたら、もっともっと。
- power
- そんな事は無いと思いますよ。旅行記を読む限り、旅行の途中ではスペイン語で楽に話しておられるような気がしていたんですが。
- 待井
- 「ビシクレータ」、毎日毎日それを聞くわけですからね。そりゃあ嫌でもわかるようになりますよー。
- power
- ビシクレータ。ちょっと待ってください。私は大学の時に、第二外国語がスペイン語だったんですよ。
- 待井
- あ、そうなんですか?
- power
- はい、そうなんですよ。確かビシクレータは、 「驚いた」 という意味だったでしょうか。ビックリシータと。どうですか?面白いでしょうか?涙が出そうになるほど面白くないですよね・・・。あのー、今日はもうそろそろ失礼した方が良いでしょうか・・・。ショボン。
- 待井
- まあまあ。ビシクレータとは自転車の意味ですからね。まあ、言語の事ですが、もっと英語圏に長くいておけば良かったな、とか思いますよ。あとフランス語圏とか。
- power
- 辞書は持ち歩いておられましたか?そういえば辞書を誰かにあげた、という記述を読みましたが。
- 待井
- あげた?そんなのあったかなー。覚えてないですねー。でも、英語と日本語さえあれば、後は現地で調達できるじゃないですか。やりようによっては何とかなるんですよ。最悪は英語がわかる人を捕まえてきたりするんですよ。その辺もね、5、6年も旅行していると、知恵がついてくるもんなんですよ。あ、ところで質問は何でしたっけ?答えになっていましたか?
- power
- 「旅行をするのに最も適した乗り物は何ですか」という質問です。
- 待井
- 全然外れてるー!
- power
- 質問に対する点数をつけていいですか?98点!
- 待井
- おお!結構高い!
- power
- 900点満点です。
- 待井
- はははー。ま、やっぱり自転車ですよね。あ、そう言えばイングランドで見たんですが、ローラーブレード、ストックを持ってデイパックを背負って颯爽と走っている人を見かけたんですよ。あれもいいなあ。カヌーもいいなあ。まだ一度も乗ったことは無いんですが。リカンベントもいいですね。うーん、自転車ですね。
- power
- いろいろとお悩みの様子ですが、やっぱり自転車ですか。私も常々そう思っていたんです。ところで待井さんにとっては、自転車に乗る行為そのものが面白いと思われますか?それとも移動するための手段でしょうか?
- 待井
- やっぱねー、何と言いますかねー。今、工場に働きに行っているんですが、朝4時半くらいにまだ星空が出ている時に出て、ハンドルを握って、タイツをはいて行くと、「ああ、気持ちいいー!」みたいなね、「いやー、自転車最高ー!」みたいなねー。なんだろうね、あれ。「よーし、今日もやるかー」みたいなねー。
- power
- 「なんだろね、あれ」っていいですね。
- 待井
- いやあ。いいですね。移動する手段というか、すーっと走るし。なんと言いますか、いいですよね。ガソリン無しで走るし。
- power
- 環境に対する意識は、高いんですか?
- 待井
- 帰ってきたときは凄かったんですけれど、今はそれ程でも無いですね。車も頻繁に乗りますし。帰国当初は世界を走ってきて自然を見てきて、何かをしなければいけないという意識が強かったんですね。最近は乗っていてノスタルジックな気分になることがありますね。世界を走っていた自分、みたいなものを思い出したりしますね。
- power
- 人は自転車にまたがったら、その瞬間ムラムラと何かこみ上げてきたりするものがある。と耳にした事があるんですが、待井さんはどうですか?
- 待井
- はははー!仕事が終わって、車で帰る仲間に「じゃあ」と挨拶をして、自転車に乗った途端「よし、競争だ」「よし、渋滞にはまるな」とか、「よし、先に着いた」みたいなね。ありますね。
- power
- 旅行されていた時には何かと競争されたり、というようなことは・・
- 待井
- や、ありましたねー。
- power
- あ、あったんですか?

飛脚号(現在)
- 待井
- チリでのことですよ。ウクライナから来たサイクリストがいましてねー。彼はロード、私はフル装備のあの飛脚号(注:待井さんの自転車の名前)。こんな風にして必死に走りましてねえ。「おお、おまえやるなあ!俺の帽子やるよ!!」なんて貰ってねえ。ずうっと南米ではあの帽子をかぶって走っていましたねえ。そういえば、日本一周をしたときも同じようなことがありましたねえ。あれなんでだろうなあ・・・。「このやろー」とか思ってね。燃えるときもありましたねえ。
- power
- しかし、競争してばかりではなく、出会った他のサイクリストと二人で走ろうと思ったけれども、速度が違いすぎるから先に行ってくれ、というような事もあったみたいですよね。
- 待井
- ええ、それもありましたね。スイス人のサイクリストと一ヶ月間走ったことがあって、彼は荷物が軽いから先に行ってしまうんですよ。で、待っててくれたりするんですよ。それで僕が追いついたら、もう出発。おい、俺の休憩時間どこに行ったんだい。いつ休むんだい、って感じで。
- power
- 面白いですね。外国人らしい気がします。待っていてくれる、というのは楽しいです。自転車が好きな方は、ディテールが好きな方が多いと思うんですが、待井さんは、パーツはこれで、どうのこうのと、こだわりはお持ちなんでしょうか。
- 待井
- いやあー。ほとんど、無かったかなあ。高校の時にそういう友人がいて、ちょっと影響されたんですけどね。クランクがTAがいいとか、ディレーラーはカンパがいいとか。でも性能で言ったらシマノが全然よかったりしてねえ。最近はもうぜんぜん。まあ、サドルはとりあえずブルックスかなあ。てな感じですよ。サイスポとかを見ますともう、すごいことになっている人もいますけど、そこまではね。もっと本当はこだわらなければいけないと思うんですけどねえ。
- power
- でも、パンク修理とか、無茶苦茶な回数を経験されていますよね。で、どうでしょうか?パンク修理は。ちなみに私はとっても苦手なんですが。
- 待井
- 上手では無いと思いますけどね。とりあえず外して。とりあえずヤスリがけして。最初は、すぐにペタッと貼りましてね。
- power
- 待たないといけないんですよね。
- 待井
- そうそう、そうなんですよ。全然くっつかなくてね。メキシコとかで。おっかしいなあー。おっかしいなあー。そんなレベルですから。で、しばらく経ってから、あ、待てばいいのか。
- power
- ちょっといいですか?衝撃的にくだらないことを思い付きました。『待井さんだけに、もうちょっと「待ちぃ」』と。どうですかどうですか?
- 待井
- でね、パッチも現地調達なんですが、海外ですとね、固いパッチがあるんですよ。なかなか付かなかったりとか。弱かったりすると、そこからぷうーとふくれたりとか。いやあー。うんざりでしたね。
- power
- へえー。いろいろと苦労があるんですね。
- 待井
- もうね、その場で直すのが絶対嫌なので、必ず予備のチューブを持ち運んでいるんですよ。で一応原因を調べて、発見して。またそこでパンクしちゃうと最悪ですよね。今度は乾くまで待とうか。と。
- power
- あ、説明中すいません、電撃的に思いついたことがあります。『待井さんだけに、「ちょっと、待ちいや」』っとぅ。これはどうでしょうかどうでしょうか?
- 待井
- ちゃんと乾かないと、荷物が重いので、空気が抜けるんですよ。そんな状態でホワホワしながら走るか。どうしようかなあ、とね。
- power
- そんな事があるんですか。
- 待井
- ええ。パンク修理か・・・・・・。嫌いですよ。
- power
- ・・・・ま、待井さん。
- 待井
- ・・・・・。
- power
- ・・・・・。
- 待井
- ・・・・・。
- power
- ・・・・・す、すみません、しんみりさせちゃって。でも僕不安だったんです待井さんのように百戦錬磨いや千戦錬磨の方にパンク修理は案外楽しいんだと言われるんじゃないかって!パンク修理は面白いって諭されるんじゃないかって!僕、僕、もう不安で不安で仕方無かったんです!
- 待井
- 下手ですよ。
- power
- はいわかりました。安心しました。じゃあ特に、自転車はこれがいい!とか、こだわりは強くお持ちではないんでしょうか。
- 待井
- ええ、実はそうなんですよ。意外でしょ?
- power
- まったく、驚きました。絶句です。アワワワワ。なーんて。
- 待井
- 結構ラフといいますか、あんな感じ(と、隣の部屋にある飛脚号を指さす)ですからね。好きな方はもう、ピシィー!っとしておられますからね。
- power
- ピシィーッっと、ですか?
- 待井
- そうです、ピシィーっと。例えば他に世界一周をされた方でうちに飾って大事に大事にしておられる方とかいるんですよ。本当は私もそうしたいんですけどねえ。
- power
- 私もあまり自転車をピカピカにしておけない人間なので、ほっとしたりします。ところで、レースはどうですか?
- 待井
- レースですか?22、3の時に、トライアスロンに出たんですよ。野尻湖の。第一回と第二回に出たんですけどね。水泳が遅くてねえ。なんか、クロール調子悪いなあ、いいや平泳ぎで行っちゃえ。トライアスロン、平泳ぎ。えらい遅れてしまいましてね。で、今度バイクに乗り換えましてね。今通勤に使ってるやつです。そこで100人、がーって抜きましてね。ああいう競うのは嫌いじゃないですよ。ツールド北海道とか、ああ言うぐあーっと競うやつよりは、楽しみながらの方がいいかなあ。ツールドしまなみってありますよね。ああいうのなら、後ろからのんびり、出たいなあ。ツールドフランスとかですが、レモンとか、知ってますか?
- power
- ええ、酸っぱいやつですよね。
- 待井
- ・・・。
- power
- あ、すみません、真面目な場面でくだらない冗談を言ってしまって。仕切なおさせて下さい。コホン。梶井基次郎の名作のことですよね。あれは短編なので夏休みが過ぎて9月に入ってからの読書感想文におすすめです。みずみずしい檸檬の、目に刺激さえありそうな黄色が迫り匂い立ってくる、京都が舞台の小説ですよね。今もある書店の丸善が舞台で。「見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階層をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかかっていた。私は埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。私はしばらくそれを眺めていた。」強烈です。檸檬です。檸檬です。終わり方が唐突で衝撃的で。
- 待井
- フィニョンとかですね。それからもう一人、えーっと。誰だったっけなあ。
- power
- イノーですか?
- 待井
- そうそう、ベルナール・イノー。あの当時は食い入るように見ていましたねえ。今はレースはそんなには、かなあ。やっぱりツーリング派ですね。今や結婚して安定志向なんでしょうね。
- power
- 結婚とレースがこれほど密接に関係していたとは!私もメモしておきます、心のノートに。キザな話はこれくらいにさせて頂き、ちょっと話が前後してしまうんですが、100か国以上行かれたわけですが、今から考えて、一番また行ってみたい国を挙げるとしたら、どこですか?良かった国、ではなく。
- 待井
- うーんー。難しいなあー。
- power
- 今からどこに行かれたとしても、一度は行かれた事のある場所ということになるじゃないですか。
- 待井
- そうですねー。アラスカに最初に行って、あのアラスカの空気の香り。あれをかぎたいなあ。というのもあるし。雪が無い状態のあの道を走ってみたいし、メキシコの熱い人情味にまた触れたい、というのもあるし。チリのパタゴニアか?しかし風が厄介だしなあ。アイスランドも良かったし。えー、難しいー。
- power
- 答えは無いだろうなと、思ったりもしていたんですが。
- 待井
- あのオーストラリアの満点の星空の下、ビールを飲みながらまた走りたいなあ・・。絞りきれないですよー。イギリス?バイクショップを経営しているあの人のところにまた行きたいなあ、とか。まあ、思い出も絡んで来ますよね。自分の世界、というか。
- power
- まあ、そうでしょうね。
- 待井
- パタゴニア、か?もう一回走るとしたら・・・。思い付くのは。キャンプしながら走りたい。食料を積んで、もう一度行きたいですね。もう一回、と聞かれて考えるときに、大自然をもう一度見たい、という思いが来ますね。
- power
- パタゴニアはやっぱり凄いんですね。
- 待井
- ええ。うーん。
- power
- え?どうなんでしょう?

アルゼンチン、パタゴニア 「空と大地、そして風と会話する日々が続く。写真からは聞こえてこないが強風の音は「ボーボー」とものすごい」、だそうです。すさまじい風景。 - 待井
- うーん。ああ、カラコルム・ハイウェイもいいですね。中国とパキスタンの峠なんですがね。あそこも世界中からサイクリストが集まる素晴らしいところです。いいですねえ。
- power
- そうですか。なんだかうんうん唸らせてしまって恐縮極まりないです。しかし、地球の自然は素晴らしいんですね・・・。さて、私は「出会いが宝」のCDをずーっと読ませて頂きましてですね。そのあまりの量の多さにですね。
- 待井
- もう、あきれかえったでしょう?
- power
- はい、言葉は悪いですが、辟易した、といいますか。
- 待井
- いやあ。もうね、今から見ましたら、うんざり、ですよ。うんざり。ていうか、我ながら感心しちゃいます。よくやったなあ。って。自己満足ですよ。もう。
- power
- 一方の私も、読み切ったわー。みたいな充実感がありました。自己満足です。
- 待井
- ははははー
- power
- それでね、これほどいろんなものを世界をご覧になってきて、いわゆる世界の名所と呼ばれるところに行ってこられましたよね。それを拝読していますと、もう待井さんにとって世界には見るものがあまり残されていないんじゃ無いか、と思うんですが。
- 待井
- いや、全然ですね。本当に。例えば同じコースを走ったとしても、時間とか季節によって、感じ方も、見るものも発見も全然違うわけじゃないですか。だから本当にごく一部というんですか。もっとあったんですよ。もっと。もっと見るものがあったんです。もう、まだひとかけら、みたいな。それだけ走っても全然なんです。一応、観光名所と呼ばれる主だったところ、例えばイグアスの滝、エンジェルフォール、フィヨルドとかを見たんですが、それでももっとありましたよねー。
- power
- それで日本をご覧になると、どうなりますか?
- 待井
- 日本に帰ってくると景色をどうしても比較してしまいます。白糸の滝とかを見ても、イグアスよりはちょっとなあ・・なんて思ってしまいますけどね。そういうのは残念ながら感じてしまいますよね。でも、ほのぼのとした日本らしい風景というのはあります。この間、この近くの(兵庫県の)三田でみんなで集まったんですが、その田圃があって、山があって、はあー、きれいな風景だあー!とかね、そういうのは、外国に無いですし、そういうので感動したりしますね。だから、見るものが無いというのは全然逆で、もっとあるし、今行っても同じコースを走っても、全然時代が違うのでね・・・。
- power
- ジーンと来るようなお答え、ありがとうございます。どうしてこれほど世界は奥が深いのでしょう。飽きないんでしょう。ところで旅行中、特にカメルーンでは、大変な目に遭われましたよね。
- 待井
- うーん。病気になって、自転車が折れて、強盗にあって、9万キロあたりで立て続けに悪いことが起こり、ひょっとしてこれはもう旅を辞めろということかな、これ以上続けたら死んでしまうかもしれない、とも思ったんですが、ポーランドで出会ったボルティックさんに「何があっても辞めちゃいけない」と言われていたこと、親父との約束のこともあって、やっぱり、挫折せずにやろう。と思いましたねえ。
一番左がボルティックさん - power
- でも、旅を続けていると何となく危なそうなこともされていますよね。知らない人に「うちに泊まりに来ないか」と言われるのにホイホイついて行ったりとか。
- 待井
- ええ、その辺は駆け引きなんですよ。でもね、これはこの前来た少年にも言ったんですが、全部遮断してしまうと旅が旅じゃなくなってしまうじゃないですか。だまされる覚悟でついていったり。それでだまされたりもするんですけどね。でもね、全部、こいつ、怪しいし。と思ったら、常に緊張感を張り巡らて、構えてしまいますよね。まあお茶でもお茶でも、と勧められて「何か入っているかもしれない・・・」と思ってしまったら、旅っておしまいじゃないですか。まあ、何か入っていてもいいか、とか、盗まれてもいいや。とか、ね。それぐらいの覚悟です。でもね、ある程度だんだんわかってきます。親切かどうか。目を見たりすればわかるもんです。気の利かせ方とか。知らぬうちにいいやつ、悪いやつ、見分けていたんだと思います。危険察知みたいな、ね。
- power
- 長い間旅行されていて、時間感覚は狂ってくるんじゃないかと思うんですが。
- 待井
- またまた難しい質問ですねえー。
- power
- まあまあ、甘いものでも食べてください。
- 待井
- 基本的に、起きて、飯作って、食べて、走って、飯作って、食べて、走って、飯作って、食べて、寝て、というサイクルなんですよ。それは、もうね、仕事みたいになってくるんですよ。だから、砂漠とか走っている場所が単調な時には、すごく一日が長かったりするんです。距離とか時間とかを気にして。案外朝の部が長かったり。町に行って日本人宿でだらだらすごして寝坊したりしてしまうと、後悔してしまったりすることもありましたよね。もっと走らなきゃ。もっと観光しなきゃ。とかね。いい景色があるときには、興奮したりしてね。時間の感覚か・・。
- power
- ええ。
- 待井
- 月に一度、実家に電話していたんですが、それで確認できていましたね。「え?何々ちゃんが結婚?え?誰々が子供を産んだ?」とかね。ショックだったりしましたね。帰ってきたら、カラオケ行こうといって行ったら、知らない曲ばかりだったりとか。行った時と同じ、精神年齢は23のままだったんですよ。あ、そういうことを考えれば行かない方がいいですね。確かに世界を見てきて、経験を積んできたわけですが、その位の年齢って、みんな社会で経験を積む大事な時期じゃないですか。それが私には無かったので、やっぱり仕事の面とか、焦りましたよね。社会一般的な知識が養われていないんじゃないか。とかね。結局好き勝手6年間やっていたわけですから。そのあたりのプレッシャーは講演に行ったりしても感じましたね。自分が幼いんじゃないだろうかとか。失われた6年間、みたいな。だから、海外で活躍しようとしてやろうと、国際感覚を養いたい人は世界一周をやってもいいかもしれないですけれど、その間日本に触れていないわけですから、ぐぐっと下がるものもありますからね。ちょっとそれは怖いですね。浦島太郎じゃないですが、携帯電話も無くって、総理大臣も6回も変わりましたし。それは怖いです。よく帰国して社会復帰できる人とできない人といるみたいですけどね。
- power
- できない人がいるんですか?
- 待井
- ええ、いるみたいです。
- power
- その点は無視できないですね。さて、次の質問なんですが、「出会いが宝」の中で、時折待井さんが、泣くシーンがありますね。
- 待井
- ギィさんとの別れね。

ギィさんと。 - power
- ええ。私が印象に残っていたのは、メキシコで大晦日に紅白歌合戦のラジオを聞いていた時に。
- 待井
- ああー。ベリーズだ。何となく、泣きましたよね。不思議だなあ。あとは日本に帰ってきたときかな。
- power
- 泣く回数が少ないと思うんですよ。
- 待井
- テレビ番組の「ウルルン紀行」みたいに泣け、と?
- power
- そうですそうです。別れる時に、寂しいじゃないですか。僕ならばもうこりゃ泣いてるゼ、涙の海に浮き輪を浮かべるゼ、と思うシーンで、おおーっとここで待井さんクールに立ち去ってしまうのかー?というシーンがよくあった気がするんですよ。それで、待井さんにとって、涙の意味は何だろうかな、と思いまして。
- 待井
- まあ、涙もろい気はするんですよ。でも、何でだろうな。
- power
- あの、ギィさんとの別れの時など、本当に泣いておられたんですよね。
- 待井
- そうですよ。なんだかポロポロ涙が出たんですよ。もう、10年も前か・・。人情、愛情に触れたとき、かなあ。嬉しさ、かなあ。ヨーロッパは冷たくて、優しくされなかったのかな。途上国ではおい、こっちこい、なんて言われたりしてね、そんな中でギィさんはよくしてくれたのかなあ・・・。でも、特に涙の意味はない、ですね。
- power
- そうですか。にしても、なんか感情面も含め、いろんな事が赤裸々に描かれていて、最高です。特にCDで言えば最後の方の、kさんとのやりとりは・・。
- 待井
- ああ、あれ!あれ、場違いじゃないですか?
- power
- いいえいいえ、もう、ハラハラして読みました!
- 待井
- kさんね。kさんは美人でした。確か私より一つ年上だったんですよ。
- power
- kさんの写真が一枚も無いのが残念なんですけれど、それは「出会いが宝Ⅱ」で公開されるんでしょうか?
- 待井
- 実はね、写真が一枚も無いんですよ!パキスタンで飯を食っている時に、美人の日本人女性が歩いていてね、うわー。と思って。もう会うことなんて無いだろうなと思ったら宿にいて。緊張して。見てないわけじゃないですか、日本人のかわいい子なんて。もう、一目惚れ。それでパキスタンで一回別れて。クリスマスか。ばったりネパールのレストランで偶然出会ってね。それから一緒に飯食ったりして。あの頃はサイクリングよりもkさん。みたいなね。
中国 タシクルガンを後にクンジェラブ峠へ。 - power
- そうそう、それがよく伝わって来たんですよ。景色どころじゃない!サイクリングどころじゃない!みたいな。
- 待井
- ルートも変更。みたいなね。kさんが帰国してからは、ファックスのやりとりをしていたんですが、ぱたっと返事が来なくなって。あの時は気が狂いそうでしたね。何で返事が来ないんだろう、って。
- power
- ああ、聞いただけで切ないです。もう、辞めてー!
- 待井
- もう辞めてますよ。
- power
- ほ。良かった。切なさという名の河に流され溺れそうでした。さて、最後の大きな質問なのですが、世界や地球とはどのようなものであるとの感覚をお持ちなんでしょうか?
- 待井
- む、難しい・・・。
- power
- 世界とは一体何なんでしょうか?
- 待井
- な、なんて難しい質問なんだ・・・。あそこにそういう生活があり、そこに家族がいて、生活があって・・・。今夜眠れそうにないですねえ。
- power
- じゃあ、適切な答えに行き当たるまで寝ずに徹夜してみて下さい!なんて。
- 待井
- 逆に、その質問でどういう答えを期待していたんですか?
- power
- いや、私の予想できない範囲のものを持っておられるんじゃないかと・・・。
- 待井
- 一応、人は動物ですからね。日本だったら、経済とか利益を求めているし。アフリカでもそういうものを求めているし。豊かな暮らしとか。一方で自然が破壊されていたりするんですが・・・。うー、難しい質問だなあー。何なんだろう。どうあるべきか、とかそうじゃないんですか?
- power
- まあ、それも多少は含めまして。では、日本についてはどのように考えておられますか?
- 待井
- 日本ですか。豊かな国であることは間違いありませんが、何か失っているものがある気がしますね。良い国であると言いたいんですが、どこかに引っかかるものもありますね。仕事がない方もたくさんいらっしゃるわけですしね。
- power
- なるほど、なるほど。では、次に、世界に全体ついては。
- 待井
- 私が世界を回ったから、ですか。
- power
- そうですそうです。だって、もし私が「世界とはね・・・」なんて言えないです。説得力が無いです。
- 待井
- いやー。難しい。しかしどうやってそんな質問を思いつくんですか?
- power
- それはいい質問です。まずウワバミの油とマグロの腸とキャビアとをすり鉢の中で30時間混ぜ合わせます。10時間そっと寝かせた後にそれを冷蔵庫に入れたり出したり、13回繰り返したものを壺に入れたものを地中に埋めます、それからお歳暮で頂いたカルピスの原液をおもむろに・・・
- 待井
- 世界とは。
- power
- 世界とは?
- 待井
- 素晴らしい!!!

雲の上のような、フランスでの走り - power
- ・・・。
- 待井
- もう、最高!!
- power
- やっぱり素晴らしいんですか?
- 待井
- 良い風に考えればそうです。環境破壊とか、汚染とかテロとかいろいろあるにはありますが。世界とは、素晴らしい。素晴らしかった。自転車で走った世界には、出会いがあり、自然があり、あそこの夕焼けがすごかった。大自然の神秘を見られた。あそこに育った人の優しさが良かった。
- power
- おおー!
- 待井
- 難しく考えすぎるから、良くないんですね。うん、でも、世界は素晴らしかった!
- power
- 強盗などに遭われたじゃないですか。

- 待井
- 世界は、素晴らしい!
- power
- そのようなマイナスの面を差し引いたとしても、残るものがある、と。
- 待井
- 素晴らしかったなあー
- power
- 聞いてない・・・。
- 待井
- あ、まあね、この辺をぐさり、とか、この辺をボキリとか、やられたかもしれないんですが、それでも素晴らしいって言うだろうか・・・。言うだろうなあ・・・。
- power
- 世界とは、素晴らしい。ありがとうございます。最後になりましたが、それと同じくらい重要な質問、いいですか?
- 待井
- 桃です。
颯爽と世界一周に出発する待井さんと、見送るご家族。 - power
- まだ、何も言ってないです!好きな果物は?
- 待井
- アフリカではね、明けても暮れてもマンゴーなんですよ!でも、バナナですかね。
- power
- へえー。自分の事で恐縮ですが、私は桃が好きです。
- 待井
- やっぱり桃でしょう。
- power
- さすが、世界の待井さんです!果物を知り尽くしておられるんですねえー。ナンチャテ。今日は長い間、ありがとうございました。
- 待井
- こちらこそ!
待井さんとのインタビューはこれまでにない長いものとなってしまいました。
前人未踏と称される何か偉大なことをした人は、あらゆる意味での熱い何かを胸に抱いて生きておられるのではないかと、僅かながら緊張していたのですが、「そんなこともありましたねえ」などと気さくに受け答えして下さる待井さんとお話していると、ごくごく普通のそのあたりを歩いている人と何ら変わりがないことを知らされました。きっとみなさんも待井さんに会われたときに、自転車で世界一周をしたことがある人だ、ということを感じることはないだろうと思います。ただ、待井さんは普通の人が経験するであろう何百倍のものを見、感じ、人と出会われているだけなのです。
幾つか投げかけてみた質問に、「どうだろうなー、うーん」と、腕組みをして考えられるのを見ていると、自転車で世界一周することとは一義的に定まるものなどではないし、定める必要もまたない、ということなのだろうな、と当たり前のような事を私は思いました。
待井さんが常に掲げらている「出会いが宝」とは、日本一周をしておられる時に旅先で出会ったある方から贈られた言葉、「人生には多くの邂逅があればあるほど実りあるものである。」に基づくそうです。人と競うためではなく、人と出会うための自転車。どのように乗って走っても自転車って本当に楽しくてたまらない乗り物ですね!
最後になりましたが、待井さんご自身が2年以上をも費やして作成された壮大な旅の記録「出会いが宝」CD-ROMは、冗談抜きで傑作です。まるで読者もその場にいるかのような印象を受けるでしょう。一人旅行の淋しさ、人の優しさ、世界の素晴らしさ。読まなければ損。
power(2003/11/30)
関連事項
- 待井剛氏のサイト「出会いが宝」
- http://homepage1.nifty.com/117/
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