自転車野郎の青春回顧録 No9
自転車野郎青春回顧録、青春と言えば、旅。旅と言えば「恋」、そして「ロマン」です。今週はこれでいきましょう。こだわりの恋、ロマン、そして夢。
いや、でも自転車旅行はいいですねえ。本当にいい。自転車だからいいんです。
恋とかロマンとか、自転車野郎にはあんまり縁がないように思うでしょ?でも、結構あるんです。ラブストーリーに縁が・・・。んー。いいんだなあ。この自転車旅行の出会い触れ合いエトセトラ。んー・・・(回想中・・・)
1988年5月。房総半島を走っていたときです。
「今日はちょっと遅れてしまったなあ」
と昼の自炊をどこかでしなければと思っていたときです。ようやく場所が落ち着き、自炊道具を広げて飯を食べていました。誰も通らない田舎道で、道路の草むらに座り込んでワシワシとやってました。
そこに車に乗った母と娘。徐行しながら窓から顔を出し、
「あらお兄さん、何してるの?」
「え、いえ、あのお昼を・・・」
「あらそう、気をつけてね、火の始末。」
とか何とか言って、変人を見るような表情を残し、そのまま過ぎ去って行ってしまいました。
「ああ、僕はこんなとこで何を食っているんだ・・・飯をワシワシ食って、変人にしか見えねえなあ、こりゃ。」
落ち込んで、そそくさと自炊道具を片付けていると、さっきの娘さんが怪しい僕に近づいてくるではありませんか。
「あのー・・・」
「うわ、またきた。」
今度は何を言われるんだろうと覚悟していると、娘さんは、おいしそうな苺を手にしているではありませんか。
「これ、どうぞ。」
その優しさたるは、なんと言えば良いでしょう・・・一回告白して振られた彼女に、もう一度振り向いて、気を寄せてもらったような、あの感覚に似ていました。なんか急にテンションはハイになり、僕は必死に彼女に自転車旅行の素晴らしさ、そう、夢やロマンを語りました。多くの人と会う楽しみ、大自然を駆ける醍醐味、そして見知らぬ土地で頭をぽか~んと叩かれたように恋することもあるのさあってなことを・・・彼女は、うなづきながら分かったような、分からないような、僕もはっきりとは覚えていませんが、それなりに彼女は聞いていたようです。
でも、とりあえず彼女はしっかり僕の夢を聞いていてくれたようでした。彼女は後に、僕の日本一周走行マップを手にオートバイで日本中を駆け回り、挙句の果てに日本一周中の自転車野郎と結婚してしまったんです。まさか彼女にそんな未来が待ち構えているなんて、このときは夢にも思いませんでした。
青春回顧録・・・今週は恋がテーマでした。それではまた次週。
(写真:恋する自転車野郎においしいいちごを持ってきてくれたKさん。やさしさが心に染みます。)
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なんかすごい「縁」というものの強さを感じる話ですね。
その娘さんは、自転車野郎に興味があったからその後そうなったのか、それとも道端で自炊をしている男に興味を持ったからそうなったのか。
その娘さんとは後々まで連絡が取れていたということもすごい。