自転車レースの最高峰であるツールドフランスに唯一出場した日本人、今中大介氏の、94年にイタリアに渡ってから96年にツールに出場するまでの日記を纏めたもの。サイクルスポーツ誌だったかバイシクルクラブ誌だったかに、細切れになって連載されていたので、馴染みのある文章かもしれません。
私はこの本を一度書店で手にしたことがあったのですが、ぱらぱらとページをめくるなり、「なーんだ、雑誌のと同じやん。」と棚に戻してしまったのです。というのも、雑誌上での掲載は単にコラムであり、エピソード紹介の色が強いという印象を受けていたからです。
なぜだか結局購入して読み始めたこの本、始めから面白さアウタートップです!大変面白いと言う意味です。単身でイタリアに来てしまい右往左往しなければならない緊張感、トレーニング中に路上から応援を受けたり友人が徐々に出来てゆく様など、現地で走る人しか体験しえない事柄が満載。
いきなりゴッティーやブーニョら大物サイクリストに囲まれて始まるプロ生活は、レースを中心とした文章で綴られていきます。言葉を学びながらそういった様々な選手と直ぐにうち解けて仲良くなって行く様は、読んでいて痛快ですらあります。サムライ、ハラキリです。
それにしてもプロはレースが多いですね。毎週末、よりも更に頻繁にレース。今中氏の役割はアシストで、遅れたエースを集団に引き上げたり、チームカーにものを届けたり、持ってきたりと、ただ参加しているだけではなく、きちんと仕事をしているところが素晴らしいです。カミカゼ、ハラキリです。
幾つものレースに関する内容とともに、それらに並行して生じた出来事に彼がどのように感じたかが、気さくな文章で書いてあるのも読みやすさを加速させます。途中には奥さんの一口コラムもあって「大ちゃんは・・なんです。」と突然、現実世界に引き戻してくれます。
"今中選手がヨーロッパに行けたのも、所詮シマノのお陰。集団の後ろでひらひらと付いて走っていただけでしょ"と巷間では批判があるでしょう。リタイヤや上位に入らない結果だけを見るとそう見えます。ですが私、これを読んで大いに反省しました。今中氏、スゴイ!と手に汗握ること間違いなしです。
雑誌のコラムがこれ程までに緊張感の満ちたものになるとは知りませんでした。自転車レースで上位の成績を意識したことのある方、世界のトップの凄まじさが気になる方、今直ぐ書店にアタック!
注:このレビューは、2001/06/03に旧power's cycle diaryにて掲載したものを、今般訂正・加筆したものです。
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