07_machii

本当に苦しかった西アフリカのニジェール走行。

自転車旅行中、特に西アフリカの走行は辛いものがありました。
と言うことで、今回は当時の日記をそのまま書き出してみました。読みにくいところもありますが、お許し下さい。

ニジェールの首都ニアメからドッソと言う村に戻り、取りあえず東に向けて走り出す事にした。体の調子が悪かったので午後2時くらいに木陰で休み、昼食をとった。玉ねぎを入れて卵焼きを作り、町で買った久々のマンゴーを食べた。甘い物がとても美味しく感じる。昼食を食べただけなのにやはり疲れてしまい、シートを敷いて、木陰で20分ほど倒れるようにして横になり休んだ。しばらくするとヤギの放牧をする少年たちが近くにやって来た。何かと思ったら、私が食べ捨てたマンゴーの食べかすを拾い、

「チューチュー」

とマンゴーの繊維質の部分を食べ始めた。まさか

「そんなもの食べるな」

とも言えない。ショックだった。暑くて辛いこんな土地になぜ彼らは住み続けるのだろうか。子供たちの姿を見ながら、もうろうとしてそんな事を考えた。

しばらく横になり、その後も再び走るべく起き上がろうとしたがしんどい。しかしこんなサバンナでへたばって寝転んでいても始まらない。とにかく前進しようと出発。ところが20km程走るとまた疲れて、木陰にシートを敷いてそこにうつ伏せになり、再びダウン。通常ならこんなに疲れるなんてことは有り得ない。ドゴンドッチまではあと10km足らず。起き上がり、サドルをまたいで、何とかペダルを踏み出す。何だかもう、もうろうとしてペダルを踏んでいた。太陽は沈み、ドゴンドッチまではあと4km。ところがまたそこで疲れて、今度は道端に座り込んでしまった。疲れだけでなく、だるさもある。寒気はない。しかし少し熱があるような感じ。しばらくしてなんとか腰を上げ、走り出した。このとき走ったドゴンドッチまでの4kmほど、今回の旅で長く、そして辛く感じた事はなかった。瀕死の思いでやっとドゴンドッチの町に着く。道沿いには車の修理屋や屋台、商店など一通りの店が200m位か国道を挟んで両側に建ち並んでいる。町には電気も水道もあり、一軒のまともな宿(800円程)もあった。

ふらふらしながらここに投宿する。電気と水道が部屋にあったのは本当に良かった。この日の晩、私は自分がマラリアではないかと疑った。もしマラリアならば寒気がするはずだが、それはない。しかしとりあえず薬を飲んでおく事にした。薬の名はラリアンと言う強烈な予防薬。夕食も食べずにファンタとこのラリアンを同時に空腹状態の腹に入れてしまった。食欲はまったくないので、この日の夕食はファンタとラリアンだった。体中にあるのは極度の疲労と頭痛とだるさ。

「この薬を飲めばもしかしたら直るかもしれない。」

そう思って飲んだのだが・・・夜中に何度も起きては苦しくて唸った。やはりマラリアなのか。

翌朝22日。朝起きても食欲はまったく湧かない。ベッドから普通に起き上がろうと思っても思うように体が言うことを効いてくれない。なぜかとても体力がいる。

「ハー、ハー、ハー・・・」

そう息を荒くしながらやっと起き上がる。やはりどうにかなってしまったようだ。

「とにかく何か食べなければ。」

商店街のある国道沿いまでふらふらと歩いて買い物に行く事にした。自転車に乗るのもしんどく、歩いた方が良いと考えたからだった。ところが歩くのはもっとしんどい。思うように体が動かず、普通に歩く事ができない。自分の足をやっと少しずつ前に出すのが精一杯だ。半歩ずつ、ちょびちょびとゆっくり歩いた。周囲からは、私の歩き方は変人か、完全な病人に見えていたかもしれない。通常なら1、2分で着くであろう数百mの距離なのに、ものすごく長く感じた。歩いていると今にも倒れそうな感じだった。やっと商店に辿り付き、そこでインゲンの缶詰めと、オレンジ、パイナップルの缶詰を買う。このわずかな買い出し作業でかなりの体力を消耗、同じ道を歩き部屋に辿り着くと、ベッドにバタンキュー。オレンジとパイナップルと水とジュースでこの日の食事は終わり。水分を強引に腹に入れた感じだ。寝ていても苦しい、辛い1日だった。

翌朝23日も病状にそれほど変化はなかった。何とかベッドから起き上がり、とにかく何か食べ物を胃の中に入れなければと、とっておきの貴重な日本製のインスタントみそ汁、それに昨日商店で買ったインゲンの缶詰めを炊めて美味そうな日本風の朝食を作った。これならたくさん食べれそう。食べるとうまかった。ところが胃の中に入っていく感じが、何かいつもと違う。どこか違和感を覚える。胃がビックリしている感じだ。と、次の瞬間、

「お、お、おー、うーうーやばい・・・」

慌てて近くのビニール袋を手にしたが、半分は間に合わず。食べたものを全部そっくりそのまま吐き出してしまった。貴重な日本食もせっかく買った缶詰も、全てが無駄になってしまった。吐く為に作った朝食。悲しい。ショック・・・。胃が、体が、食べ物を受け付けてくれない。今まで大喰い自転車野郎の異名を持っていたこの私。食事を戻してしまうなんて。何も食べれずに、悲しい思いで再びベッドに横になる。 昼過ぎに少し腹が減ったので、パイナップル缶詰とオレンジに再挑戦。しかし、これも全てきれいさっぱり吐き出してしまう。

「なんて事だろう。」

夜になっても食欲を取り戻す事はなかったが、宿に隣接されているレストランで何か食べようとフラフラと注文しに行った。

「何か食べなければ。」

そう思い、食欲の出そうなソースライスと言うのを注文した。注文してレストランで座っているのが苦痛だったので、7号室の私の部屋まで持って来てもらうように頼んだ。しばらくすると、牛肉入りの美味そうなソースがかかった食事が届いた。通常なら3杯くらい軽くおかわりをしそうな本当に美味そうな食事だっただろう。しかし、この時食欲はまったく湧かなかった。でもとにかく何かを胃に入れなければと、ひと口食べた。

「パクり。ん、うまいな。」

ふた口、そして三口、

「パクパクパク・・・美味しいじゃないか。」

しばらくすると、また胃が反応した。そして、

「ううー、来た来た、ゲゲゲーッ。」

食べ始めてからわずか十数秒間の出来事。悲しい・・・。再びベッドで横になる。結局、この日に胃袋に入れたのは水とお茶のみ。もう悲しくて情けなくて、天井を見つめていると、涙がちょろちょろ出てきた。

「やはり、無理してチャドを経由するのは断念しよう。これから先、こんなんではとても走れそうもない。ニアメに戻ってカメルーンヘ空路で飛んでしまおう。カメルーンなら日本大使館もあるし、最悪の時は病院も紹介してもらえるかもしれない。首都なら物資もあり、保養もできるだろうし・・・。」

弱気になった私の頭の中にはそんなルートが浮かび上がっていた。情けない、悔しい。こんな所で挫折するなんて。

「アフリカに負けた。悔しい・・・」

ベッドに横になっているとポロポロと涙が出てきた。チャド行きは諦めるのか・・・。

・・・後半へつづく!

<写真:辛かったドゴンドッチの部屋で。げっそり痩せてしまった。>

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