戦争の足音が忍び寄る昭和九年、軍部の暗躍から実用自転車を使用した前代未聞の本州縦断レースが開催される! そういえばこの日本で自転車ロードレースが大いなる人気を博していた時代があったそうです。
ツールドフランスはフランスを一周するレースである。 ジロデイタリアはイタリアを一周するレースである。 一方、ツアーオブジャパンは・・日本の数カ所を走るレース?
このような日本ロード界の状況ですから、日本人サイクリストからしてみれば、この愛する国日本で大々的にレースが開催されるのは夢のまた夢なのです。フィクションながらも限られた資料を最大に活かし、当時の自転車事情を可能な限り反映させて書かれているらしいこの本はその夢を見させてくれるのかしら? という期待を抱きながら読ませて頂きました。
もちろん時代設定が昭和一桁台と相当古いので、ロードレースといっても今とは大違いです。読めば分かることですが、例えば・・
・ほとんどの参加者がレース経験なんてない。
・現在のような優れた機材はない。
・道路も舗装なんかされていない。
これではレースを走る方も運営する方もさぞかし大変だろうと、同情せざるを得ません。
・でも多額の賞金がきっちりと掛かっているから、主人公を含めてみんなが賞金目当てに頑張るよ!
って結局お金かいな!といつの時代も変わらぬ動機には感動させられました。
このように設定に強く興味をかき立てられる本書ですので詳細はご自分でお読みになって確認していただくとして、いくつか気になる点があります。あまり否定的なことを述べるのは気が引けるので、控えめにして挙げてみます。
・ストーリーが面白くない。次の展開に期待感が持てない。
・いくらなんでもそんなレース展開はありえないだろうという、意味不明なレース描写があまりにも多い。
・自転車で走る爽快感が皆目伝わってこない。
上下二段組み、432頁。やっとのことでの読了後、本当にこの作者は自転車に乗ることがお好きなのだろうか?という強度の疑問が湧いてきます。おっと、いけない、またまた否定的な事を言ってしまいました。でも。でも。
とはいえこの本にはなんとなく心地のよいノスタルジックな雰囲気が漂っていますので、自転車競技にはあまり興味がなく、且つ時代設定が昭和初期と聞いただけで大興奮される方には大いに価値のある本ではないでしょうか。
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