00_takuya

Bicycle Film Festival 3

「ヘイ、Nick。日本からボランティアが来たよ…えーっと何て名前?」
「タクヤだけど…ハイ、ニック。」
ボランティアをしに来た訳じゃないねんけど。
「…ウン…BFFも有名になったな…Tokyoから来るなんて…」
京都やし。
「…じゃ、さっそく悪いんだけど。えーっと何だっけ…運ぶ物が沢山あるから、えっと、それは何処にあるんだ?」
「もしかしてRED-INKと違う?君が来るって言ってたよ。」
「…そうだった…良く解ったね…じゃぁ行こうか…いやチョット待ってアレをコレしてからコレをアレしとかないとダメなんだ…」
やっぱり…Kyoto LOCOと同じやん。きっとものすごい仕事の量があってカオスな状態なんや。助けてー!

結局、断れないまま、RED-INKに戻り、何だか判らん大量の荷物を車に載せ、僕とBrendtは自転車でビクトリア・シアターに向かった。
「…なぁ、今晩上映する映画の1本がまだ編集中らしいんだ…ハハッ。ハハハッ!…間に合うかな…」
「ハー?」
「…ダメかな…ハハハッ…無理かもな…僕は皆の前で恥じをかくんだな…フフッ…」
「いやっ、大丈夫!(かもな。)きっと間に合う!(ワケなさそう。)しっかりしろ!」
「…そうか…大丈夫か…君が、えーっと何て名前?Takuya?あっそう…君がそう言って保証してくれるなら大丈夫かもしれないよ…僕って悲観的だと思うかい?そうだよね。僕って悲観的なのさ…フフフ…」
「もし間に合わなかったら、僕が何とかするから。とりあえず今は考えんとこう。なっ。」

聞くところによると、Brendtが一日に受け取るメールは数百件らしい。電話の電源を入れると、スグに誰かが掛けてくるという状態だ。今日まで働きまくって、疲労が限界にきているのだろう。悲観的にもなるよな。わかるよ、その状態。僕も徹夜で飛んできたんだから。
飛行機の窓から空を見てて眠れなかったり、隣の席の人が太ってて、プヨプヨした腕を押し付けられたり、その上どういうわけか、映画が「ベーブ」と「ドクター・ドリトル」でブタちゃん二本立てだったり、機内食をお代りしたら、アテンダントブースで食べさせられて、アテンダントのお姉さんと仲良くなったりと、大変な苦労をしてココまで来たのだ。

Missionに戻ってVictoria Theaterに着いた。映画の上映の準備自体は劇場の人がやっている。老齢で白髪の映写技師がカッコイイ。ビデオプロジェクターも35mmも準備は万全。
僕等の仕事は、当日ボランティアと打ち合わせたり、スポンサーのバナーを貼ったり、Tシャツ販売のブースを作ったり、etc. etc…といった大量の雑務をこなすだけ。Brendtに会って数十分だというのに、もう完全にスタッフの一員である。ボランティアの人に指示を出したりして。周りから見れば、僕は気の良い親切な日本人であろう。だが実は、僕はヤナケンから極秘指令を受けてSFに来ているのだ。それは何かと言うと…

時間は前日、横浜に戻る。
「タクヤさん、今回SFに行って貰うにあたって、困難かつ重要な任務があるんです…」
「ヤナケンさん!それはもしかして…ブッシュ暗殺?」
「いや、BFF-TOKYOで何を上映するかをブレントに決めてもらって、それを日本にもって帰って欲しいんです。」
「なーんや。てっきりテロかと思いました。驚かさんといて下さいヨ。」
「コンテンツさえあれば勝手に映画祭が出来るわけでしょ、もちろん勝手にするつもりはないですけど。だからブレントはそう簡単に渡してくれないと思うんです。まず信用を勝ち取らないと。」
「えーえー、信用のことなら任せといて下さい。どうしてもダメなら盗んで来ますから。」
「…大丈夫ですか?」

そうなのだ。僕がボランティアをしてるのは、Brendtの信用を得てコンテンツを入手する為なのである。また最悪、強奪するためにも、どこにビデオがあるのかを知っておくには組織に潜入する必要があるのだ!ブツさえあれば、SF→TOKYOに密輸するなんて朝飯前だ。メッセンジャーやもん。
「…おいTakuya…何て独り言を言ってるんだい?…もしかして僕のことかい?」
「ギク!いや違うから。」
「…開場まで1時間だよ…もう人が劇場前に来てるんだ…駐輪場所をどうにかしないとな。」
「そういえば、まだ着いてないって言ってた映画は来たの?」
「………ハハハ………」
「ワー!ごめん、ごめん!大丈夫!ノープロブレム!僕は劇場の前を整理しに行くよ。」

既に劇場前には、自転車に乗った人たちがパラパラと集まっている。
「ハーイ。何時にオープン?」「18:30だよ。まだ1時間あるよ。」
「ヘロー。開場は何時?」「18:30ってそこに書いてあるやろ。もうちょっと待ってて。」
「ワッツアップ?何時から?」「18:30」
「ヨー!何時に開くんだい?」「よーく聞いてな。同じ事を聞く人がいたら開場18:30、開演19:00って言うねんで。OK?」
「ミー?OK、No Problemo.で、何時オープンだっけ?」

開場30分前には歩道上には駐輪スペースが無くなり、車道にBike Treeを作ることに。バイクツリーとは、2台もしくは3台の自転車を互いにもたせてかけて自立させて駐輪する方法だ。10分ぐらいで車道の路肩はイッパイに。その辺の標識や、防犯用の柵も自転車だらけに。
ピスト、MTB、タンデム、折りたたみ、ロード、クルーザー、チャンクバイク、何百台ものありとあらゆる種類の自転車が、仲良く並んでいるのは圧巻だ。

入場待ちの列はVictoriaのある16th St. から17th St.まで伸びている。通りがかりの自動車から手を振って応援するドライバーも大勢いる。メッセンジャー達は、紙袋で包んだ小瓶のビールを友達と話しながら飲んでいる。見るからにインテリの白ヒゲに眼鏡のジェントルマンは、時間を惜しんで難しそうな本を読んでいるが、興奮して落ち着かない。old-schoolなパンクルックのグループも、ソワソワしながら奇声を発している。自作のCritical MassのTシャツを着た、元ヒッピーらしい初老の御婦人は、ニコニコしながらそれを見ている。
人数もさることながら、自転車という接点でこんなにも色々な種類の人達が集まったのはちょっと驚いた。

「まだ入場出来ないのか?早く入れてくれよ。」×数百人
ドアを防衛する僕に、もう皆待ちきれなくてプレッシャーをかけてくる。
「もうちょっと待っててね。」
「トイレ使いたいんだけど。」
「向かいのバーのトイレを使わせてもらってね。」
「行ってみたけど長い行列が出来てるのよ。」
「商売繁盛だね。」
「いや、あれは皆サイクリストね。なんとかして。」
「じゃぁ君だけ入れたげよ。」

「あれ?やっと入れるのかい?」
「本当だ会場したのかな?」
「おーい!やっとドアが開いたぞ。」
「前の奴!早く入れよ!」

群集が津波のごとく、もしくはゾンビの集団のごとく、ドアに押しかけて列が崩れて取り囲まれ、なしくずし的に開場することになってしまった。

まだ続く。

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