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書評:「ラフ・ライド」 ポール・キメイジ著(大坪眞子訳)

「僕がこの本を書くのは、そうすることによっって下積み選手のぱっとしない生活、名を上げることもなくプロ自転車競技会にどっぷり浸かって生活する大勢の無名選手の一人の生き様を知ってもらえると思ったからだ。」

こ、こ、これは・・。 自転車に関する書物は数多とあるでしょうが、こんなにバッチグンの本がこの世の中に存在していることに感謝したい。 この本を手に取って読めることに感謝したい。 そして、既に99年に日本語で出版されている(現地ではじめに刊行されたのは1990年)のに今の今まで読んでいなかった自分を厳しく責めたい。なにやってんねんっ! どういうつもりやっ!

気合いが入ったところで、この本の面白さを定量化してみます。
【本書】:1 
【ただマイヨジョーヌのためだけでなく】:0.02

この本は、かつての自転車競技アイルランドチャンピオン、ツールドフランス3回出場のポール・キメイジによる実話です。

少年時代から自転車競技を始め、めきめきと頭角を現してアイルランドのチャンピオンになり、外国人選手(アイルランド人はヨーロッパ本土の人からすれば外国人なのです)としてヨーロッパのチームに所属し、ツールドフランスやジロデイタリアなど数多くのレースに出場するという、ロード選手であれば誰もが夢見るような階段をテケテケと登るキメイジ。

しかし、現実はそうは甘くなかった。 ヨーロッパ本土ではほとんど活躍できないんですね。考えてみるとプロ選手のほとんどはそうではないでしょうか。全く勝てずに終わっていったり、すぐにクビになったりしている人が多いに違いありません。でも、キメイジはクビになるほど弱くは無かったし、勝てるほど強くもなかった。そんな、辞めよか続けよか、くすぶる中でキメイジが経験し、考えたことが面白く、おかしく、悲しく書かれていきます。(訳者もあとがきでそのように仰っています。訳もうまい!)

最も気の利いた会話を一つ紹介します。

「こんな大会('89ジロデイタリア)に出場できるなんて、すばらしい気分でしょうね」
「いいや、全然」

キメイジはドーピング問題についても鋭くメスを入れています。というか、現地でこの本が刊行された当初はあまりにもドーピングについて現実を赤裸々に書いていたために大いなる物議を醸したとかなんとかカントカ。そのあたりについても詳しく書かれていますのでドーピング問題に興味のある方はどうぞ。

いずれにせよ、自転車競技にご興味がおありの方がこの本を読めば自転車レースに対する見方が変わるでしょう。2,500yenと法外に高いのですが、25,000yen払ってでも読む価値あり。珠玉の一冊。

☆☆☆☆☆(☆=20点、★=5点)

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