power×飯島誠氏
数学に興味のある人が絶対にピタゴラスを知っているように、日本で自転車競技に少しでも興味がある人で飯島選手を知らないという人は絶対にいないでしょう。しかし、飯島選手はなぜこんなにも自転車が強いのでしょうか? それは飯島選手の自転車にかける想いを紐解かなければ決してわかりません。ということで、日本自転車競技界の歴史に名を残す選手の一人、飯島誠選手へのインタビュー!!!!!
前編
- power:
- 飯島選手、今日はどうぞよろしくお願い致します。まず、飯島選手の略歴をお願い致します。
- 飯島選手
- (以下、敬称略):1971年2月12日生まれ、東京都八王子市出身の38歳です。中3でレーススタート。高校から自転車部に所属し、本格的にレースに参戦。中央大学でも自転車部。大学を卒業し、高村製作所で実業団生活を始め、94年~2008年までナショナルチームに選出され、2000・2004・2008のオリンピック他、アジア大会などにもロードとトラックの両方で連続出場しました。現在は、チームブリヂストンアンカー所属です。
- power:
- うーん、まばゆい程のご経歴ですね。いきなりこんな事をお尋ねして何なんですが、こんなにすごい経歴を残してこられて、誇らしく感じられますか?
- 飯島:
- しっかり振り返ってみると頑張ったなぁとは思いますね。
- power:
- 安心しました。「大したことないです」なんて言われたらどうしようかと思っていましたから。飯島選手、いきなりですが、自転車って何でしょうか?
- 飯島:
- 自分にとって、人生そのものです。
- power:
- では、自転車競技って何でしょうか?
- 飯島:
- 過酷の一言。でも大好きな仕事です。
- power:
- のっけからどんどん脱線しているようで恐れ入りますが、いままで一番"過酷だった"時を、そしてどれくらい過酷だったか教えていただけませんか?
- 飯島:
- 何といってもNo.1は、フィリピンであった「マルボロツアー」というステージレースです。気温40度の中、18ステージ。最後は260km・・・。自転車好きな自分が、自転車を嫌いになった瞬間のレースです。
- power:
- ははは。なんか、やり過ぎで笑えますね。ありがとうございました。さて、飯島選手は現在ブリヂストンアンカーでキャプテンをしておられますが、どのような目標をお持ちでしょうか。
- 飯島:
- 優勝とチームのレベルアップです。
- power:
- チームのレベルアップを図るには、具体的にはどのようなことが求められますか?やはり練習に次ぐ練習ということになるのでしょうか?
- 飯島:
- 練習はもちろんですが、技術の他に、各々の意識の統一が重要ですね。
- power:
- チームメートを引っ張っていく上で、飯島選手の豊富なご経験が生かされるのでしょうね。ところで、選手の絶対数が少ないという観点からして、選手層がヨーロッパと比較するとどうしても薄くなってしまう日本で、チームプレーは思った通りに実行できるものですか?
- 飯島:
- ヨーロッパのレースをライブで観ることができる世の中ですから、チームプレーがどういうものかは、向こうで走らずとも何となくわかるものだと思います。画面で観たものをイメージすれば、レース中、監督やチームメイトと無線で連絡が取れますので、チームプレーができるんですね。レースの場数を踏んでいれば、そんなに難しいものではないと思います。
- power:
- なるほど。ではブリジストンアンカーのチームとしての走りにも注目したいと思います。で、飯島選手ご自身のことに戻りまして...過去を振り返って、あの頃は良かった、意味があったと感じられる時期はありますか?
- 飯島:
- 1994~97年のイタリア遠征ですね。向こうのチームで走れた経験はやはり大きいです。
- power:
- 最も記憶に残っていることは何ですか?
- 飯島:
- 何よりレースのスピードに度肝を抜かれたことと、レースが激しすぎてロードレースは格闘技だ! と思ったことですね。
- power:
- 「度肝を抜かれたレースのスピード」とは、別の表現で言えばどんな感じなのでしょうか?
- 飯島:
- 「人の尻だけを見て終わった」という感じですかね。
- power:
- よくわかりました(笑)。スピードだけが重要ではないでしょうが、いまの日本のレースは、その「度肝を抜かれたレースのスピード」に近づいているんでしょうか? また、格闘技みたいになっていますか?
- 飯島:
- うーん・・・。まだまだですかね。
- power:
- そうですか...。タイムマシンがあるなら、選手として、戻ってやり直したい時点はありますか?
- 飯島:
- 1994年のシチリアでの世界選手権ロードと、オリンピック全部ですね。
- power:
- 飯島選手。宇宙物理学者のホーキングによれば、タイムマシンは存在し無いんです。
- 飯島:
- ええっ!上尾の水上公園にはあるらしいですよ!
- power:
- あれー! ホーキングが間違っていたとは! ま、2009年の現在、それもあり得えない話ではないかも...。あ、すみません。それは、もう一度やりなおせるとしたらあそこをもっと上手くやれるのにという、何か改善できる点がおありだということでしょうか?
- 飯島:
- 世界選手権ロードは、調子が良すぎて前半から飛ばし過ぎたので、自重していればゴールに絡めたと思うんですよ。一方、オリンピックは、後の映像を見てアタックするタイミングが悪過ぎたと・・・。
- power:
- ははは! もしですよ、もし、飯島選手が自転車選手としてもう一度何もかも初めからやり直すことが可能なら、もっと強くなれたと思われますか?
- 飯島:
- 思う。
- power:
- がーん。これはすごいです。では、はじめからやりなおせたら、何を変えますか?
- 飯島:
- 小中学生の時にもっといろいろなスポーツをして、基礎体力から身につける!
- power:
- 素朴な疑問ですが、科学が進歩している現在、自転車選手として強くなる方法というものは、ある程度確立されているのでしょうか。それとも十人十色なのでしょうか?
- 飯島:
- これは、ある程度は確立されていると思いますよ。
- power:
- 意地悪な質問で恐縮ですが、強くなる方法がある程度確立されている一方で、飯島選手ははじめからやり直せたらもっと強くなれたはずだと仰います。これはどうしてでしょうか?
- 飯島:
- 自分の場合は試行錯誤の中、選手をしてきたわけです。つまり、遊んだ時期もあるんです。もし、現在の様な環境に若いうちから入っていることができたら、試行錯誤の遠回りをせず、もっと早く目標に近づけたかな・・・? なんて。
- power:
- 「なんて」って...。茶化しは無しでお願いします(笑)! 飯島選手は長い間、現役として活躍されていますが、いまの日本の自転車競技界の様子はいかがですか? 閉鎖的な世界でょうか?
- 飯島:
- 日本はまだまだ閉鎖的なところがあると思いますけど、世界、つまりヨーロッパへの道は確実に近くなっていますね。
- power:
- 世界で肩を並べて戦えようになってきた、と理解して宜しいでしょうか?
- 飯島:
- いいえ。残念ですが、そうではありません。ヨーロッパで走れる環境が近くなったということです。
後編
- power:
- 強くなるためには、やっぱり、ヨーロッパを意識しながら走らなければならないのでしょうか?
- 飯島:
- ヨーロッパが本場なので、当然、意識しなくてはいけないと思いますよ。
- power:
- そのヨーロッパでは最高峰の選手たちがドーピング陽性と出ています。自転車競技の世界でやっていくためには薬物の使用は避けて通れないと言う説もあるようですが、飯島選手はドーピングについてどのようなご意見をお持ちでしょうか?
- 飯島:
- スタートラインは同じでないといけないと思うんですよ。そのためにももっと厳格にドーピングコントロールをするべき。正直者が損をするような事があってはいけませんから。
- power:
- 厳格なドーピングコントロールとは?
- 飯島:
- DNAを管理するとかですかね。とはいえ、どんなに厳しい制度にしても、医療が進歩する限りイタチごっこかもしれませんが。新薬が開発されれば、ドーピングに掛かるまでにタイムラグがあるわけで・・・。難しいですね。
- power:
- スタートラインを同じにすべきというのは真っ当なご意見だと思います。 ところで、競技人口が限られているので仕方ないところですが、日本のレースでは毎回、だいたい同じ顔ぶれが揃ってきます。そうすると、試合が「ナーナー」になってしまうようなことはないのだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
- 飯島:
- 自分はいつもフレッシュです(笑)。「ナーナーレース」は嫌いですから。他の選手のことはわかりません。
- power:
- いつもフレッシュな飯島選手、ステキです! 日本の自転車競技界に関連した話なのですが、先日、馬場さんという方にお話を伺いましたら、世界の自転車レースとは別に、日本にプロリーグを作ろうと奮闘しておられるようです。飯島選手はそのような、新しい形態のレースが出来れば参加したいと思われますか?
- 飯島:
- そうですね、まずは、世間の方々にロードレースというスポーツがあることを認識してもらうことが大切だと思います。プロリーグを発足させることによって、達成できるのであれば、もちろん進んで参加させていただきたいですね。当面は自分を含め、選手のレベルアップが先決であるような気がしますけど。野球にしても、サッカーにしても強い選手が戦っているから観ているファンは楽しいし、惹きつけられるわけですよね。それがあれば、ロードレースも活性化して、その結果、かかわる方の生活が維持できるようになるんじゃないかな。
- power:
- 活性化していけばいいですよね。私も大いに期待させて頂いています。将来への期待に胸を膨らませながら・・・現在の話、日本人は自転車選手として生計を立てていけるのでしょうか?
- 飯島:
- トップ20くらいに入ることができれば、可能だと思いますよ。
- power:
- だとすると、これから始める人もやる気が出てきますね。僕も再開しようかな...。
- 飯島:
- そこまで日本の自転車界は甘くないですよー! 自分がいるんで。(笑)
- power:
- やっぱりそうですか。そりゃ飯島選手をはじめ、皆さん真剣に取り組んでおられるんですものね。不謹慎な発言、大変に失礼致しました(笑)。飯島選手は機材に大変お詳しいようですが、ずばり、「最新型」の自転車は速いのでしょうか?
- 飯島:
- 最新は速いです。でも一概に最良とは言えないですが・・・。
- power:
- 最新機材は速いが最良ではない、これはどういうことでしょうか?
- 飯島:
- 速さのみを追求するなら、最新型がいいと思いますが、古いモデルにはそれぞれその良さがあり、自分はそういうものが好きなんですね(笑)。
- power:
- 一つで結構ですので、飯島選手がお好きな、古いモデルについて教えていただけませんか?
- 飯島:
- 手組のホイールです。
- power:
- いや~、実にいいですねえ~。こういうモノの楽しみも自転車が好きな人にはたまらない点です。そこで質問です。ずばり、自転車はなぜ楽しいんでしょう?
- 飯島:
- いろいろな所に行けるからかな~。
- power:
- バイクや車じゃだめですか?
- 飯島:
- だめです!自分の体ひとつで現地に到着した時のあの「達成感」がたまらないのです。
- power:
- 体一つで行えるジョギングの方はいかがでしょう?
- 飯島:
- ジョギングはジョギングで楽しいのですが、自転車の方が断然行動範囲が広がるので、やはり自転車がいいな。
- power:
- 痛いほどわかります! 自転車ってやっぱり最高ですね! 飯島選手が、ああ、自転車やってて良かったな。と感じる瞬間はいつですか?
- 飯島:
- 勝った瞬間と四季を肌で感じられるところかな。
- power:
- 自然とふれあえるのが自転車の楽しみだと仰る方は少なくないようです。そういう、飯島選手が季節感をお感じになるような練習コースはどこですか?
- 飯島:
- 身近なとこだと、関東近辺のサイクリングロードです。
- power:
- サイクリングロード?
- 飯島:
- 実は大好きなんです。サイクリングロード(笑)。車が通らないですし、自分の場合は平日に走れるので快適なんですよ。
- power:
- 大好き、というのがポイントですね。いま日本は自転車ブームだそうですが、新しくロードに乗り始められた方に、自転車を最大限楽しむ秘訣を一言お願いします!
- 飯島:
- 安全運転。怪我をしない。色々な意味で無理をしないこと!!
完結編
- power:
- はい、私も気を付けます! 飯島選手、第一線を退かれることがあれば、その後は何をしたいですか?
- 飯島:
- やはり自転車に係わる仕事がしたいですね。
- power:
- もしアラジンの魔法のランプがここにあって、なんでも願いが3つかなえられるとします。何を言いますか??
- 飯島:
- 疲れない身体、不屈の精神力、一生困らないお金
- power:
- 飯島選手。アラジンの魔法のランプは実在しないんですよ...。
- 飯島:
- おかしいな。昨日の夢には出てきましたけどねー。ひげの大男がね。
- power:
- えっ。アラジンの魔法のランプってあったんですか!? よし、僕も今夜...。すみません、下らないことにつきあっていただいて。飯島選手のお人柄が伝わってくるインタビューとなりました。さて、佳境にさしかかって参りました。好きな映画は?
- 飯島:
- スタジオジブリの作品。夢があるから(笑)それか、ソーシャンクの空、最後までドキドキさせてくれました。
- power:
- ジブリ作品の中で一番お好きなのは?
- 飯島:
- 天空の城ラピュタ。
- power:
- いやー、あれは名作です! では最後の質問、いいでしょうか。お好きな果物は?(やっぱり果物の王様は桃ですよね?)
- 飯島:
- 梨、リンゴ、柑橘系。
- power:
- ドテ。飯島選手、今日はお忙しいのに快くインタビューに応じて下さり、ありがとうございました! これからのご活躍を楽しみにしていますね!
- 飯島:
- はい。ありがとうございました。生涯現役を目指し頑張ります。(まだやるんかい。)
関連事項
- TEAM BRIDGESTONE ANCHOR
- http://www.anchor-bikes.com/team/index.html

